ロシア海軍の新世代汎用揚陸ヘリコプター母艦イワン・ロゴフ型は機雷掃海用無人艇を搭載する

『タス通信』より
2021年12月17日9時14分配信
【情報筋:新たなロシアのヘリコプター母艦は無人艇で武装する】
モスクワ、12月17日/タス通信
株式会社『B.E.ブトマ記念造船工場』(ケルチ市)で建造されているプロジェクト23900汎用ヘリコプター搭載揚陸艦「イワン・ロゴフ」と「ミトロファン・モスカレンコ」は、ロシアが開発した対機雷無人艇を装備する。
『タス通信』は造船分野の情報提供者より伝えられた。
「プロジェクト23900ヘリコプター母艦は、国内で開発された無人艇及び水中ドローンで構成される対機雷複合体での武装が計画されています。
艦上には、一度に2隻の無人艇が配置されます」
対談者は話した。
彼によると、艦内の水中音響ステーションと磁力計の助力を得た無人艇は、自身で海上機雷を探知し、識別する。
これらは、遠隔操作水中装置により破壊される。
「対機雷兵器複合体の所有は、艦隊の対機雷豚の支援無しで汎用揚陸艦が自身で遠海ゾーンでの戦闘任務を果たす事を可能にします」
対談者は強調した。

現在、プロジェクト12700対機雷防衛艦(コード名「アレクサンドリト」)は、高速艇BL-680を基にした無人艇「スカンダ」と、更には機雷を破壊する為に意図されている無人水中装置を装備している。

『タス通信』は、この情報について公式に確認していない。
[プロジェクト23900汎用揚陸艦]
以前、プロジェクト23900汎用揚陸艦は打撃・偵察無人飛行装置の駐留の為に順応すると報じられた。
ドローンは、海上揚陸部隊への火力支援を効果的に保障し、その上陸地帯の戦術状況を明らかにし、特殊作戦実施の際、目立たない浮遊物を探知し、必要ならば排除する事を可能にする。
汎用揚陸艦は、様々な用途の重ヘリコプターグループの搭載、数百名から1000名の海軍歩兵の移送が可能である。
それは、揚陸部隊の上陸と装甲車両の移送を保障する艇の為のドックを装備する。
このようなクラスの最初の2隻の国産艦~「イワン・ロゴフ」と「ミトロファン・モスカレンコ」は、造船工場『ザリフ』で2020年7月20日に起工された。
ロシアのヘリコプター母艦は、ゼレノドリスク設計局が開発したプロジェクト23900の下で建造される。
2011年6月にロシアはフランスへ2隻の「ミストラル」級ヘリコプター揚陸ドック艦(ヘリコプター空母)を発注し、「ウラジオストク」、「セヴァストーポリ」と命名された艦は2014年と2015年に引き渡される筈でしたが、フランスはウクライナ情勢に関連して引き渡しを凍結しました。
2015年8月5日、ロシア連邦大統領ウラジーミル・プーチンとフランス大統領フランソワ・オランドは電話で会談し、「ミストラル」級ヘリコプター揚陸ドック艦の建造・供給契約の終了(破棄)を決定しました。
[ロシアとフランスはロシア海軍向けミストラル級ヘリコプター揚陸ドック艦の契約を終了させた]
フランスはロシアへ補償金として約9億5000万ユーロを支払い、2隻の「ミストラル」級に設置されたロシア製機器は全て取り外してロシアへ返却されました。
[ロシア海軍向けミストラル級ヘリコプター揚陸ドック艦の契約終了によりフランスはロシアへ9億4975万4849ユーロを支払う]
[ロシア海軍向けだった2隻のミストラル級ヘリコプター揚陸ドック艦から取り外されたロシア製機器は全てロシアへ到着した]
[ロシア向けだった2隻のミストラル級ヘリコプター揚陸ドック艦から取り外されたロシア製機器はロシア海軍へ引き渡される]
その後、2隻の「ミストラル」級はエジプトへ売却されました。
(1番艦は「ガマール・アブドゥル=ナーセル」、2番艦は「アンワル・アッ=サーダート」と改名)
「ガマール・アブドゥル=ナーセル」(旧「ウラジオストク」):2016年6月2日にエジプト海軍へ引き渡し。

「アンワル・アッ=サーダート」(旧「セヴァストーポリ」):2016年9月16日にエジプト海軍へ引き渡し。

一方、ロシアは、以前からロシア版ミストラルとも言える大型の全通甲板ヘリコプター揚陸艦(汎用ヘリコプター揚陸艦)の設計を進めており、2015年6月には、汎用ヘリコプター揚陸艦の概念設計案「ラヴィーナ」の詳細が公表されました。
[ロシア海軍将来汎用揚陸ヘリコプター搭載艦プロジェクト「ラヴィーナ」]
汎用ヘリコプター揚陸艦の為に新たな戦闘情報管理システムも開発されます。
[ロシア海軍将来汎用揚陸艦の為の新たな戦闘情報管理システムが開発される]
搭載機は、元々は「ミストラル」用に開発された艦上攻撃ヘリコプターKa-52K「カトラン」などになります。
[艦上攻撃ヘリコプターKa-52Kカトランはロシア海軍の新世代汎用揚陸ヘリコプター母艦イワン・ロゴフ型の艦載機となる]
この他、ソ連時代に生産された戦闘輸送ヘリコプターKa-29も搭載されるようです。
Ka-29は1990年代以降は予備役として保管されていましたが、2016年から修復が始まりました。
[ロシア海軍太平洋艦隊の艦上輸送戦闘ヘリコプターKa-29は飛行訓練を行なった]
汎用ヘリコプター揚陸艦の機関は、ディーゼル/ガスタービン複合推進CODAG(COmbined Diesel And Gas turbine)になるようです。
これはディーゼルが巡航用、ガスタービンが増速用であり、ロシア海軍の新型艦では、プロジェクト22350フリゲートに採用されています。
[ロシア新世代艦のガスタービンとディーゼル]
新世代汎用揚陸艦の建造場所としては、以前にはサンクトペテルブルクの『北方造船所』などが有力視されていましたが、2019年になって、クリミア半島ケルチ市の造船工場『ザリフ』(造船コーポレーション『アク・バルス』傘下)で建造する案が浮上してきました。
【造船工場『ザリフ』公式サイト】

[ロシア海軍の為の新世代汎用揚陸艦(ヘリコプター母艦)2隻は2020年5月にクリミア半島ケルチ市のザリフ造船所で起工される]
[ロシア海軍の為の2万5千トン級汎用揚陸艦(ヘリコプター母艦)2隻は2020年5月にクリミア半島で起工される?]
[ロシア海軍の為の新たな汎用揚陸艦(ヘリコプター母艦)2隻は2020年にケルチ(ザリフ造船所)で起工され、2025年と2026年に就役する]
[ロシア海軍の為の2万5千トン級汎用揚陸艦(ヘリコプター母艦)2隻は2020年5月上旬(5月9日まで)にクリミア半島で起工される]
造船工場『ザリフ』も、ロシア海軍の新世代汎用揚陸艦を建造する用意がある事を認めました。
[クリミア半島ケルチのザリフ造船所はロシア海軍の為の2万5千トン級汎用揚陸艦(ヘリコプター母艦)を建造する準備を整えている]
2隻の汎用揚陸艦の建造費は、ほぼ1000億ルーブルになるようです。
[ロシア海軍の為の新世代汎用揚陸艦(ヘリコプター母艦)2隻の建造費は1000億ルーブルになる]
因みに1000億ルーブルは、プロジェクト22350(「アドミラル・ゴルシコフ」型)フリゲート4隻分に相当します。
当初、2隻の汎用揚陸艦の起工は、2020年5月9日の大祖国戦争勝利75周年記念日に予定されており、起工に先立つ建造契約の締結は、2020年4月末までに行なわれる予定でした。
[ロシア海軍の為の新世代汎用揚陸艦(ヘリコプター母艦)2隻は大祖国戦争勝利75周年記念日の2020年5月9日に起工される]
[ロシア海軍の為の新世代汎用揚陸艦(ヘリコプター母艦)2隻の建造契約は2020年4月末までに締結される]
しかし、最近の新型コロナウイルス流行の影響により艦の起工は延期され、これに伴い建造契約の締結も先送りされ、5月22日までに締結されました。
[ロシア海軍の為の新世代汎用揚陸艦(ヘリコプター母艦)2隻の建造契約が締結された]
[クリミア半島のザリフ造船所はロシア海軍のプロジェクト23900汎用揚陸艦の建造準備を進めている]
2隻の汎用揚陸艦の起工は6月29日に予定されていましたが、またも延期となりました。
[ロシア海軍のプロジェクト23900(セヴァストーポリ型)汎用揚陸艦の起工は延期された]
その後、起工日は7月16日に決まりましたが、これも延期され、2020年7月20日に起工式典が開催されました。
[ロシア海軍のプロジェクト23900汎用揚陸ヘリコプター母艦イワン・ロゴフとミトロファン・モスカレンコはクリミア半島のザリフ造船所で起工された]
プロジェクト23900汎用揚陸艦の設計案は、以前からソ連/ロシアの一連の揚陸艦の設計を手掛けていた『ネヴァ川計画設計局』ではなく、造船コーポレーション『アク・バルス』傘下のゼレノドリスク設計局の案が採用されました。
ゼレノドリスク設計局が設計したプロジェクト23900汎用揚陸艦は、フランスの「ミストラル」級をタイプシップとしているようです。
[プロジェクト23900汎用揚陸艦(イワン・ロゴフ型)の開発・建造元『アク・バルス』のトップは語る]


2隻の汎用揚陸艦の艦名は、以前には「セヴァストーポリ」と「ウラジオストク」が有力視されていましたが、結局、旧ソ連時代のプロジェクト1174大型揚陸艦の1番艦と3番艦の名前を受け継いだ「イワン・ロゴフ」と「ミトロファン・モスカレンコ」となりました。
プロジェクト1174大型揚陸艦「イワン・ロゴフ」(1978年6月15日就役、1995年8月4日除籍)

プロジェクト1174大型揚陸艦「ミトロファン・モスカレンコ」(1990年9月23日就役、2006年12月18日除籍)

プロジェクト23900汎用揚陸艦は、指揮艦としての能力も付与されます。
[ロシア海軍の新世代汎用揚陸ヘリコプター母艦イワン・ロゴフ型は指揮艦として使用される]
[ロシア海軍の新世代汎用揚陸ヘリコプター母艦イワン・ロゴフ型の為の指揮システムが開発される]
この場合は、例えば、地中海のロシア海軍常設作戦連合部隊の旗艦としての使用などが考慮されているようです。
以前には、プロジェクト23900汎用揚陸艦は満載排水量25000トン、ヘリコプター20機搭載、海軍歩兵900名を積載すると言われ、その後、設計変更されて満載排水量は30000トンに拡大し、ヘリコプター16機搭載、海軍歩兵1000名積載、そして艦上無人攻撃機も搭載する事になりました。
[ロシア海軍の新世代汎用揚陸ヘリコプター母艦イワン・ロゴフ型は艦上無人攻撃機を搭載する]
しかし2020年12月末、ロシア連邦国防次官(防衛産業担当)アレクセイ・クリヴォルチコ氏は、プロジェクト23900汎用揚陸艦の(満載)排水量は40000トンになると述べました。
[ロシア海軍の新世代汎用揚陸ヘリコプター母艦イワン・ロゴフ型は40000トンになる]
2020年7月の起工から7ヶ月後の2021年2月、「イワン・ロゴフ」と「ミトロファン・モスカレンコ」の船体の形成が始まりました。
[ロシア海軍の新世代汎用揚陸ヘリコプター母艦イワン・ロゴフ型の船体の形成が始まった]
1番艦「イワン・ロゴフ」のロシア海軍への引き渡しは2028年に予定されています。
[新世代汎用揚陸ヘリコプター母艦イワン・ロゴフは2028年にロシア海軍へ就役する]
配備先は太平洋艦隊になるようです。
[ロシア海軍太平洋艦隊へ新世代汎用揚陸艦(新イワン・ロゴフ型)が配備される]
一方、2番艦「ミトロファン・モスカレンコ」は黒海艦隊へ配備されて同艦隊旗艦となり、セヴァストーポリ港に駐留する事になるようです。
[新世代汎用揚陸ヘリコプター母艦ミトロファン・モスカレンコはロシア海軍黒海艦隊旗艦となる]
上述のように、プロジェクト23900汎用揚陸艦へ無人機を搭載するという話は以前から出ていましたが、それは無人ヘリコプターになるようです。
[ロシア海軍の為の艦上無人攻撃/偵察機と艦上無人ヘリコプターの開発が進められている]
[ロシア海軍の新世代汎用揚陸ヘリコプター母艦イワン・ロゴフ型は無人攻撃/偵察ヘリコプターを搭載する]
更に、プロジェクト12700対機雷防衛艦が搭載している無人小型掃海艇と水中無人装置もプロジェクト23900汎用揚陸艦へ搭載され、掃海艦としての機能も付与されます。
- 関連記事
スポンサーサイト