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ウクライナの黒海造船所はロシア海軍の近代化に参加する意向を示した

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『中央海軍ポータル(フロートコム)』より
【黒海造船工場はロシア海軍の近代化に参加するつもりである】
2013年3月5日

ロシア連邦産業・貿易省の代表者は、実務訪問の為、公開株式会社「黒海造船工場」を訪れた。
同社の広報サービスは発表した。

ロシア代表団のメンバーには、ロシア連邦産業・貿易省長官代理アレクセイ・ラフマノフロシア連邦産業・貿易省の造船業・海洋技術部長代理アンドレイ・クラソフが含まれていた。
訪問中にゲストは、同社の生産能力と現在の造船及び艦船修理プロジェクトの実施状況について知った。

この訪問の結果、ロシア代表団は、「黒海造船工場」の生産ポテンシャルが高い水準に在る事を指摘した。

次に、同社総取締役ワレーリー・カラシニコフは、現在、工場はウクライナ海軍に就役している艦船の修理作業を滞りなく実施し、ロシア海軍の近代化の課題に協力する提案を検討する用意があると述べた。


【公開株式会社「黒海造船工場」公式サイト】

「ニコラエフ南造船所」として知られる「黒海造船工場」は、1897年に創設され、ロシア帝国海軍ソ連海軍の各種艦船を建造してきました。
創設当初は「ナヴァリ工場」という名前でした。
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その後、1922年に「アンドレ・マルチ記念第198工場」、1956年に「イワン・ノセンコ記念第444工場」と改名され、1968年から「黒海造船工場」となりました。

1930年代には、6万トン級の戦艦プロジェクト23(ソヴィエツキー・ソユーズ級)「ソヴィエツカヤ・ウクライナ」を起工しましたが、1941年6月のドイツ軍ソ連侵攻により造船所が占領されてしまい、竣工には至りませんでした。
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なお、日本では「ソヴィエツキー・ソユーズ級戦艦3隻の建造費はソ連の国家予算の1/3」というデマが流布されていましたが、正確には「ソヴィエツキー・ソユーズ級戦艦4隻の建造費は10億1800万ルーブルと見積もられており、これは1940年当時ソ連の海軍予算のほぼ1/3に相当した」です。

1950年代にはプロジェクト82重巡洋艦「スターリングラード」を建造しましたが(1951年12月31日起工)、こちらも未完成に終わりました。
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1954年に就役し、現在もノヴォロシースクで記念艦として保存されている巡洋艦「ミハイル・クトゥゾフ」(プロジェクト68bis)「黒海造船工場」で建造されました。
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1960年代以降は、ソ連海軍「航空機搭載艦」(空母)を専門に建造するようになりました。
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[プロジェクト1123対潜巡洋艦]
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「モスクワ」:1962年12月15日起工/1965年1月14日進水/1967年12月25日就役、1996年11月7日除籍、その後にインドで解体

「レニングラード」:1965年1月15日起工/1966年7月31日進水/1969年4月22日就役、1991年6月24日除籍、その後にインドで解体

[プロジェクト1143/11433/11434重航空巡洋艦]
「キエフ」:1970年7月21日起工/1972年12月26日進水/1975年12月25日就役、1993年6月30日除籍
1994年8月28日海軍旗降納、2000年5月に中国へ売却
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「ミンスク」:1972年12月28日起工/1975年9月30日進水/1978年9月27日就役、1993年6月30日除籍
1995年10月に韓国へ回航、1998年に中国へ転売
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「ノヴォロシースク」(11433):1975年9月30日起工/1978年12月26日進水/1982年8月14日就役、1993年6月30日除籍
1996年1月に韓国へ回航、その後に解体

「バクー」(11434):1978年12月26日起工/1982年3月31日進水/1987年12月11日就役
2004年1月20日、インドへの売却契約締結
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2004年3月5日、ロシア海軍旗降納
「ヴィクラマーディティヤ」として2013年11月就役予定
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[プロジェクト11435/11436重航空巡洋艦]
「アドミラル・クズネツォフ」:1982年4月1日起工/1985年12月6日進水/1991年1月20日就役
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「ワリャーグ」(11436):1985年12月6日起工/1988年11月25日進水、1992年工事中断
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1998年3月、未完成のままマカオ企業へ売却、中国大連へ回航され、2012年9月25日に「遼寧」として就役
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[プロジェクト11437重原子力航空巡洋艦]
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「ウリヤノフスク」:1988年11月25日起工、1992年2月4日に工事中止決定、1994-1995年解体

1991年12月のソ連邦解体により、黒海造船工場「空母」建造にも終止符が打たれました。

黒海造船工場は、これらの「空母」建造と並行して民間船(漁船など)の建造も請け負っており、利益をもたらしたのは、「空母」よりも民間船の建造でした。


ソ連邦解体後はウクライナの造船所として存続しましたが、ロシア海軍の仕事は全く無くなり、ウクライナ海軍の仕事と民間船の建造や修理で会社を維持して来ました。

2011年5月17日、ウクライナ海軍向けの新型コルベット・プロジェクト58250の1番艦「ヴォロジーミル・ヴェリキー」黒海造船工場で起工されました。
未完成の「ウリヤノフスク」以来、23年ぶりに同社で起工された戦闘艦でした。
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[プロジェクト58250]
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満載排水量:2500トン
全長:113m
幅:10.1m
吃水:5.6m
速力:32ノット
航続距離:4000海里
自立行動期間:30日
乗員:110名
兵装:OTOメラーラ76mm速射砲×1
ミレニウム35mm機関砲×2
アスター15艦対空ミサイル垂直発射機(16セル)
MM40エグゾセ・ブロック3対艦ミサイル4連装発射筒×2
B-515 3連装短魚雷発射管×2
NH90ヘリコプター×1


しかし、2番艦以降の建造に関する具体的な予定は立っていません。

そこで、ウクライナ海軍だけに頼っていては充分な仕事を確保できないと見た黒海造船工場は、外国(ロシア)海軍の仕事を受ける用意があると公式に表明したという事です。

今回の記事によると、黒海造船工場の生産ポテンシャルは非常に高いとの事ですが、何しろ、かつては8万トン級の「原子力空母」の建造まで手掛けた造船所が、今や2500トン級コルベットしか建造していないのですから、「ポテンシャル」は有り余っています。

黒海造船工場「ロシア海軍の近代化に協力する用意がある」として言っておらず、具体的な内容には言及していませんが、例えば、ロシア海軍現用艦船の近代化改修や、ロシア黒海艦隊向け艦船の新規建造の受注といった事が想定されているでしょう。

現在、ロシア連邦「2011-2020年までの国家軍備プログラム」により、ロシア海軍の近代化が進められています。
[ロシア連邦は海軍の整備に約4兆ルーブルを支出する]
[ロシア海軍は2020年までに51隻の新型水上艦と24隻の新型潜水艦を取得する]
黒海造船工場も、このプログラムへの参入を狙っているのでしょう。

更には、ロシア海軍重航空巡洋艦「アドミラル・クズネツォフ」の近代化改装(2020年までに近代化を行なう予定)、その先のロシア将来航空母艦計画(2020年以降に1番艦起工予定)への参入まで狙っているのかもしれません。
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