『ウクライナ特殊軍事作戦』におけるロシア海軍黒海艦隊旗艦・ナヒーモフ勲章親衛ロケット巡洋艦モスクワの動向

『NavalNews』より
2022年4月7日配信
【黒海で最も強力なロシアの軍艦の運用パターン】
ウクライナ海軍は、黒海におけるロシア海軍の大規模な集中に敵わなかった。
しかし、ロシアで最も印象的な軍艦、スラヴァ級巡洋艦「モスクワ」は、ほとんど視界から外れたままである。
我々は、同艦がこの戦争でこれまで何をしてきたかに焦点を当てる事が出来る。
ロシアによるウクライナ侵攻初日、ロシアの軍艦は黒海の小さな岩から現れた。
スネーク島では、最低限の防衛しか行われていなかった事が判明した。
しかし、それは戦略的な位置に在り、潜在的にこの地域での輸送についてウクライナ軍へ情報を提供する可能性が有る。
そして、島の奪取は、ロシアの勝利への期待の象徴となり得る。
歴史は、守備隊の反応を忘れていない。
国境警備隊のロマン・フリボフは、降伏勧告に対し「ロシアの軍艦、糞ったれ、消え失せろ!」と答えた事は有名である。
島の沖に鎮座する軍艦は、黒海で最も強力な軍艦である「モスクワ」に他ならなかった。
「スラヴァ」級巡洋艦の「モスクワ」は、サイズと兵装の両方で堂々としたものである。
同艦は当然の、黒海艦隊の旗艦でもある。
島が占領されると、「モスクワ」は戦時中の決まりきった仕事に落ち着いた。
オープンソースインテリジェンス(OSINT)を使用して、我々は、これまでの戦争中の同艦の作戦エリアを繋ぎ合わせた。
それは定期的なスナップショットしか無いが、パターンが現れている。
この分析は、独立系アナリストのダミアン・サイモンらの助けを借りて行われた。
[スラヴァ級]
ロシア海軍の巡洋艦の概念は、航空母艦が中心のアメリカ海軍のとは異なっている。
自国の空母を護衛する代わりに、スラヴァは主として敵の空母への攻撃を意図している。
これは、16基の超音速対艦ミサイルを中心に構築されたその設計に影響を与えている。
これらは、元々はP-500「バザーリト」型であったが、その後、より長距離のP-1000「ヴルカーン」にアップグレードされた。
両方のミサイルは、NATOにはSS-N-12「サンドボックス」として知られている。
黒海には空母やその他の価値の高い目標が無いので、「ヴルカーン」ミサイルには大した関連は無い。
しかし「モスクワ」には、より有用なもう1つの主要兵器システムがある。
そして、それは同艦の活動に、より直接影響するかもしれない。
「スラヴァ」級は64基のS-300F「リーフ」防空ミサイルを搭載している。
これらの長距離兵器により、同艦はパトロールエリアから黒海北部の大部分をカバーできる。
これはおそらく、セヴァストーポリに駐留するS-400ミサイルと重複する防衛ゾーンの一部である。
そしておそらはく、クリミアの他の場所に配備された他の同様のシステムとも。
[スネーク島、母基地と力の誇示]
戦争の初期、モスクワは主にスネーク島付近で活動していた。
ここは進行中の戦闘からは相対的に離れている位置であり、戦略目標であるオデーサから少し離れていた。
オデッサとも記されるオデーサはウクライナの主要な黒海の港であり、ロシア進軍の初期目的であったと考えられている。


ここは戦略的にも経済的にも重要である。
オデーサを占領すれば、ウクライナは殆ど内陸国となってしまうだろう。
そして、おそらくは別の戦略的目標へと繋がり、沿ドニエストルへの陸橋が作られる。

これは、ロシアが支援する、承認されていないモルドバの分離国家である。
しかし、オデーサに対する初期の水陸両用攻撃は実現しなかった。
最も可能性の高い説明は、クリミアからの陸路での前進が遅れた事にある。
加えて、オデーサ近辺海域には機雷が有る事が知られている。
3月2日からロシア軍艦はオデーサ近辺で威嚇任務を開始した。
そして、彼らは商船に対する多くの攻撃へ関与し、事実上の封鎖を作り出した可能性が有る。
「モスクワ」が積極的な役割を果たしたという証拠は見つかっていない。
その代わり、同艦はその後も沖合に留まった。
古い軍艦「モスクワ」は陸上攻撃巡航ミサイルで武装していない。
アメリカ海軍のトマホークに似たミサイル「カリブル」は後で登場した。
従って他の艦種とは異なり、同艦はウクライナに対して発射された巡航ミサイルの段階的弾幕で直接的な役割を果たしていない。
「モスクワ」と、殆ど全てのロシア軍艦は、定期的にクリミアの母港セヴァストーポリへ戻っている。

興味深いことに、同艦は何時もの体勢で停泊しており、予測可能な動きのパターンを作り出している。

これは、セヴァストーポリが攻撃からどのように安全であるかを示す指標となり得るだろう。
ウクライナのミサイルの射程外にあり、多層防空で防衛されているのは事実である。
3月26日にS-400ミサイルが発射された際、市内で防衛上の事件が1件発生している。
これが「モスクワ」のパターンを変えたようには見えない。
戦争が進むにつれて、ロシア海軍は大規模な水陸両用のデモンストレーションを開始した。
これには、攻撃を行うかのように6隻の揚陸艦がオデーサへ向かって航行する事が含まれていた。
しかし、最後の時点では迂回する。
これらの演習はウクライナ軍を縛り付け、欺瞞行為となる。
「モスクワ」は、これに関する主な文書化された前例のみならず観察されている。
最初は3月15日、そして3月30日である。
他にも、見られていない機会が有るかもしれない。
そこで「モスクワ」は他の軍艦に囲まれ、或いはまた、遠く離れた位置から海域を保護している。
これらの作戦で「モスクワ」は指揮所の役割を果たしているものと認識できる。
黒海艦隊で最も強力な軍艦として、そして旗艦として、「モスクワ」は、これらの役割を果たし続ける事になるだろう。
スタンドオフ防空兵器で武装した同艦は、殆ど視界から外れたままになるだろう。
しかし、オープンソースインテリジェンスを使用すれば、数多くの時間で同艦を追跡できる。
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