ロシア海軍北方艦隊の重戦略用途原子力水中巡洋艦TK-208(ドミトリー・ドンスコイ)は約1ヶ月間の洋上行動を終えてセヴェロドヴィンスクへ帰投した

『タス通信』より
2022年7月27日7時35分配信
【世界最大の原子力潜水艦「ドミトリー・ドンスコイ」は北方艦隊の基地へ戻った】
モスクワ、7月27日/タス通信
プロジェクト941重戦略用途原子力水中ロケット巡洋艦「ドミトリー・ドンスコイ」は、海上で戦闘演習任務を遂行した後に駐留所~ロシア連邦北方艦隊の白海海軍基地へ戻った。
『タス通信』は造船分野の情報筋より伝えられた。

「7月26日、セヴェロドヴィンスクに位置する白海海軍基地へ、白海から原子力潜水艦ドミトリー・ドンスコイが戻ってきました。
艦は約1ヶ月の間、様々な戦闘訓練演習任務を遂行しました」
彼は話したが、潜水艦の次の海上への出航が何時計画されているのかは明らかにしなかった。
彼によると、水中巡洋艦の乗組員は北方艦隊の全ての戦闘訓練活動へ常に参加しており、更に艦は工場『セヴマシュ』で建造された新たな原子力潜水艦の様々な試験へ関わっている。
『タス通信』は、この情報を公式に確認していない。
以前、複数の情報筋は『タス通信』へ、艦がロシア連邦海軍の戦闘編制から除外されたという幾つかのメディアの報道に反論した。
対談者の1人は、艦の今後の運命に関する決定が下されるのは、2022年12月より前にはならない事を指摘した。
彼は更に、その結果、艦の勤務時期が更に数年間続く可能性を除外しなかった。
『全ロシア海軍支援運動』のトップ、ウラジーミル・マリツェフは、「ドミトリー・ドンスコイ」は少なくとも「軍事」訓練年度が終わる2022年12月1日までは戦闘演習任務を果たすと『タス通信』へ話した。
彼によると、海軍の戦闘編制からの除外の話は未だ出ていない。
2021年1月、複数のメディアは潜水艦「ドミトリー・ドンスコイ」の海軍からの除籍の決定が下されたと書いた。
その間にも、艦は計画戦闘訓練活動へ参加し続けていると報じられた。
[潜水艦について]
「ドミトリー・ドンスコイ」(コード名「アクラ」)は1980年9月29日に進水し、1981年12月29日に海軍へ加入した。
当初、巡洋艦の主要兵装は大陸間弾道ミサイル複合体D-19だった。
2002年に巡洋艦はプロジェクト941UMの下での近代化が行なわれ、その後、ミサイル複合体「ブラヴァー」の試験に関わった。
2017年夏、巡洋艦はバルト海への艦隊間移動を行ない、主要海軍パレードへ参加した。
合計6隻のプロジェクト941が海軍の為にセヴェロドヴィンスク造船所『セヴマシュ』(『統合造船業営団』へ加入)で建造された。
全ての艦は、北方艦隊でザーパドナヤ・リツァ(ニェールピチャ湾)に駐留していた。
現在までに、この内の3隻はアメリカ合衆国の資金で解体された。
2隻~「アルハンゲリスク」と「セヴェルスターリ」は海軍から除籍され、解体を待っている。
その大きさで「ドミトリー・ドンスコイ」はギネスブック(1988年版)に掲載された。
艦の長さは172メートル、幅は23メートル。
原子力艦の高さは9階建ての建物に匹敵する。


ロシア・ソ連潜水艦総合情報サイト『ディープストーム』より
【プロジェクト941「アクラ」(NATOコード名「タイフーン」)】
プロジェクト941重戦略用途原子力水中巡洋艦(タイフーン級)は、1981年~1989年に6隻が就役しましたが、現役に留まっているのは1隻のみであり、既に3隻が解体されています。

プロジェクト941巡洋原子力潜水艦の1番艦TK-208は、セヴェロドヴィンスクのセヴマシュ造船所で1976年6月30日に起工されました。





1980年9月27日に進水し、1981年6月から8月まで工場航行試験を行ない、1981年11月から12月末まで国家試験を行ないました。
1981年12月27日には、初めて弾道ミサイルR-39の発射に成功しました。
1977年7月25日付でプロジェクト941は「重戦略用途ロケット水中巡洋艦」に類別変更されました。
1981年12月29日に受領証書へ署名されてソ連海軍へ納入されましたが、翌1982年10月までは弾道ミサイルR-39(SS-N-20)の発射試験に従事し、総計で18回の発射に成功しました。

R-39の戦力化の目途が立った事を受け、1982年12月14日に海軍旗初掲揚式典を開催し、正式にソ連海軍へ就役し、北方艦隊の第18潜水艦師団へ編入されました。
同年12月21日に母港となるザーパドナヤ・リツァのニェールピチャ基地へ到着しました。

その後は戦闘勤務(戦略核パトロール任務)や弾道ミサイルR-39の発射試験に従事しました。
1988年9月20日にセヴェロドヴィンスクの『セヴマシュ』へ到着し、新型弾道ミサイル「バルク」を搭載するプロジェクト941U改装が行なわれる事になり、翌1989年1月20日には予備役に編入されました。
しかし、1991年12月のソ連邦解体により資金供給は止まり、TK-208の工事はストップしました。
1992年6月3日付で「重戦略用途原子力水中巡洋艦」に類別変更されました。
その後、弾道ミサイル「バルク」の開発は中止され、新たにモスクワ熱技術研究所が開発する「ブラヴァー」を搭載する事になった為、今度はプロジェクト941UM改装を受ける事になりました。

2000年10月7日に「ドミトリー・ドンスコイ」と命名されました。
2002年6月26日に再進水し、6月30日から係留試験を開始し、翌2003年に洋上試験を行ないました。

洋上試験は2004年12月初頭に完了し、ロシア海軍へ再就役しました。

2005年から2010年まで潜水艦弾道ミサイル「ブラヴァー」の発射試験に従事しました。

2010年10月29日の発射試験を最後に「ブラヴァー」発射試験艦としての任務を解かれました。
[「全力全開」ブラヴァー発射試験(2010~2011年)]
その後は洋上試験を行なう新型潜水艦のサポート(試験のモニタリング)を行なう事になりました。
[タイフーン級原潜「ドミトリー・ドンスコイ」は試験艦として現役に留まる]

2013年には、戦略原潜「アレクサンドル・ネフスキー」、多用途原潜「セヴェロドヴィンスク」の海洋試験をサポートしました。
[タイフーン級原潜はロシア新世代原潜の海洋試験をサポートする]
2014年にも、新型原潜の海洋試験のモニタリングの為に何度か出航しています。
[タイフーン級原潜ドミトリー・ドンスコイは出航した]
[タイフーン級原潜ドミトリー・ドンスコイは帰港した]
[ロシア海軍最新鋭原潜セヴェロドヴィンスクはタイフーン級原潜ドミトリー・ドンスコイと共に出航した]
2015年6月26日から7月16日まで白海へ出航しました。
[ロシア海軍のタイフーン級原潜ドミトリー・ドンスコイは白海へ出航した]
[ロシア海軍最後のタイフーン級原潜ドミトリー・ドンスコイは3週間の航海を終えて帰港した]
2015年9月3日から10日まで、再び白海へ出航しました。
[ロシア海軍最後のタイフーン級原潜ドミトリー・ドンスコイは白海へ出た]
[ロシア海軍の重原子力戦略用途ロケット水中巡洋艦ドミトリー・ドンスコイはセヴェロドヴィンスクへ帰港した]
暫く動きの無かった「ドミトリー·ドンスコイ」ですが、2017年5月27日にセヴェロモルスクへ到着しました。

[ロシア海軍最後のタイフーン級原潜ドミトリー・ドンスコイは北方艦隊基地セヴェロモルスクへ移動した]
2017年7月中旬、「ドミトリー・ドンスコイ」は、クロンシュタットの『ロシア海軍の日』観艦式へ参加する為、重原子力ロケット巡洋艦「ピョートル・ヴェリキー」と共にバルト海へ向かいました。
[ロシア海軍北方艦隊の重原子力ロケット巡洋艦ピョートル・ヴェリキーと重戦略用途原子力水中巡洋艦ドミトリー・ドンスコイはバルト海へ向かった]
「ドミトリー・ドンスコイ」と「ピョートル・ヴェリキー」は、2017年7月25日にクロンシュタットへ到着しました。
[ロシア海軍北方艦隊の重原子力ロケット巡洋艦ピョートル・ヴェリキーと重戦略用途原子力水中巡洋艦ドミトリー・ドンスコイはクロンシュタットへ到着する]

2017年7月30日、サンクトペテルブルクとクロンシュタットで観艦式(主要海軍パレード)が行なわれました。

[2017年7月30日にクロンシュタットとサンクトペテルブルクで挙行される『ロシア海軍の日』観艦式には約40隻の艦船が参加する]
北方艦隊からは、重原子力ロケット巡洋艦「ピョートル・ヴェリキー」、重戦略用途原子力水中巡洋艦「ドミトリー・ドンスコイ」、ロケット巡洋艦「マルシャル・ウスチーノフ」、大型対潜艦「ヴィツェ・アドミラル・クラコーフ」の他に、潜水艦「ウラジカフカス」もクロンシュタットの観艦式へ参加しました。
「ドミトリー・ドンスコイ」と「ピョートル・ヴェリキー」は、主要海軍パレード終了後の翌7月31日にクロンシュタットを出航しました。
[ロシア海軍北方艦隊の重原子力ロケット巡洋艦ピョートル・ヴェリキーと重戦略用途原子力水中巡洋艦ドミトリー・ドンスコイはクロンシュタットを去った]
北方艦隊艦船部隊は、8月7日までに北海へ入りました。
[クロンシュタットの『ロシア海軍の日』観艦式へ参加した北方艦隊の艦船は北海へ入った]
その後、北方艦隊艦船部隊はバレンツ海で演習を行なった後、8月11日にセヴェロモルスクへ帰投しました。
[クロンシュタットの『ロシア海軍の日』観艦式へ参加した北方艦隊の艦船はセヴェロモルスクへ帰投した]
「ドミトリー·ドンスコイ」は、暫くの間セヴェロモルスクに留まっていましたが、9月初頭に出航し、9月4日に母港セヴェロドヴィンスク(白海海軍基地)へ帰港しました。
[重戦略用途原子力水中巡洋艦ドミトリー・ドンスコイはセヴェロドヴィンスクへ帰港した]
2017年9月には北方艦隊の演習へ参加しました。
[タイフーン級戦略原潜ドミトリー・ドンスコイはロシア海軍北方艦隊の演習へ参加する]
2017年12月15日には就役35周年記念式典が開催されました。
『ロシア連邦国防省公式サイト』より
ロシア北方艦隊広報サービス発表
2017年12月15日10時4分配信
【世界最大の潜水艦は35周年を迎えた】
その後も「ドミトリー・ドンスコイ」は現役に留まり続けました。

[重戦略用途原子力水中巡洋艦ドミトリー・ドンスコイはロシア海軍で現役に留まり続ける]
2018年~2019年にはオーバーホールを行ない(2018年初頭から6月までロスリャコヴォの大型浮きドックPD-50へ入渠)、2019年6月20日から白海で航行試験を行ない、深度200メートルまで潜航しました。



セヴェロドヴィンスクへ帰投する「ドミトリー・ドンスコイ」(2019年7月23日)

2021年6月20日、白海でセヴェロドヴィンスク(白海海軍基地)に駐留する小型対潜艦の対潜戦闘訓練の相手役を務めました。
[ロシア海軍北方艦隊の重戦略用途原子力水中巡洋艦TK-208(ドミトリー・ドンスコイ)は白海で対潜戦闘訓練へ参加した]
7月15日にも白海海軍基地の小型対潜艦2隻の対潜戦闘訓練の相手役を務めました。
[ロシア海軍北方艦隊の重戦略用途原子力水中巡洋艦TK-208(ドミトリー・ドンスコイ)は白海で小型対潜艦の訓練の敵役を務めた]
2021年8月23日に起工されたプロジェクト955A(ボレイ-A)戦略用途原子力ロケット水中巡洋艦2隻の内の1隻は、「ドミトリー・ドンスコイ」と命名されました。
[ロシア海軍の為のボレイ-A戦略用途原子力ロケット水中巡洋艦2隻、プロジェクト20380コルベット1隻、、プロジェクト20385コルベット1隻、プロジェクト06363潜水艦2隻はプーチン大統領の号令下で一斉に起工された]
これに伴い、今の「ドミトリー・ドンスコイ」は、「名無し」のTK-208として2020年代半ば頃まで現役に留まる事になりました。
[ロシア海軍の重戦略用途原子力水中巡洋艦ドミトリー・ドンスコイは2020年代後半まで現役に留まる]
[ロシア海軍の重戦略用途原子力水中巡洋艦TK-208(ドミトリー・ドンスコイ)は2020年代半ばに退役する]
2022年7月20日、ロシア防衛産業の「匿名希望の情報提供者」の談話を出処にTK-208は除籍され、今後解体されるという情報が出てきました。
[ロシア海軍の重戦略用途原子力水中巡洋艦TK-208(ドミトリー・ドンスコイ)は退役する]
これに対し、ロシア海軍総司令部の「匿名希望の情報提供者」は、TK-208(「ドミトリー・ドンスコイ」)はセヴェロドヴィンスク造船所『セヴマシュ』が建造した最新原子力潜水艦(おそらくは7月19日から白海で洋上試験を開始した「ゲネラリーシムス・スヴォーロフ」)の洋上試験をサポートする為に海上へ出ていると反論し、除籍の情報を否定しました。
[ロシア海軍北方艦隊の重戦略用途原子力水中巡洋艦TK-208(ドミトリー・ドンスコイ)は退役しておらず、白海で新造原子力潜水艦の試験の支援任務に就いている]
結局、TK-208(「ドミトリー・ドンスコイ」)を退役させるか、或いは現役に留めるかは、2022年12月に決定されるようです。
[2022年12月にロシア海軍北方艦隊の重戦略用途原子力水中巡洋艦TK-208(ドミトリー・ドンスコイ)を退役させるか否かが決定される]
一方、TK-208は約1ヶ月間の海上行動を終えて7月26日に白海海軍基地(セヴェロドヴィンスク)へ帰投しました。
つまり、6月末~7月初頭あたりに出航したようですが、6月末には「ヤーセン-M」原子力水中巡洋艦「クラスノヤルスク」の洋上試験が始まっています。
[ロシア海軍太平洋艦隊の為のヤーセン-M級原子力水中巡洋艦クラスノヤルスクは白海で洋上試験を開始した]
TK-208は、新造潜水艦「クラスノヤルスク」と「ゲネラリーシムス・スヴォーロフ」の洋上試験の支援任務に就いていたようです。
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