空母ヴィクラマーディティヤはロシア造船業の空母建造経験の回復に役立った
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『ロシア通信社ノーボスチ』より
2013年3月29日12時27分配信
【「ヴィクラマーディティヤ」受注は航空母艦建造の経験の維持を助ける】
ランカウイ(マレーシア)、3月29日-ロシア通信社ノーボスチ
インドの航空母艦「ヴィクラマーディティヤ」の再建造によって得た経験により、セヴェロドヴィンスク企業「セヴマシュ」は、このタイプの艦の建造経験を回復した。
金曜日、「統合造船業営団」副総裁イーゴリ・ザハロフは、国際航空・海軍機器展示会「LIMA-2013」において表明した。
「インドへの航空母艦ヴィクラマーディティヤ輸出受注の経験を得た事は、私共にとって、ソヴィエト時代の造船の仕事の実地経験の完全なる回復の手助けとなりました。
このクラスの艦を建造する為に」
ザハロフ氏は話した。
彼によると、国の最高指導者と国防省が海軍の編制に航空艦が必要であると認めた時、国内造船所は、その建造の課題に対処しなければならない。
同時に「統合造船業営団」副総裁は、今年の国家防衛発注には航空母艦は記載されておらず、国防省は、2025年までの国家軍備プログラムの修正と計画立案の開始の概要は未だ不明であると指摘した。
『イタル-タス』より
2013年3月29日12時00分配信
【ロシア造船業界は、我が国の海軍の航空母艦を建造する準備が出来ている】
ランカウイ島/マレーシア/3月29日/イタル-タス
ロシア造船業界は、ロシア海軍の為の航空母艦を建造する準備が出来ている。
「統合造船業営団」副総裁イーゴリ・ザハロフは、展示会「LIMA-2013」においてイタル-タス通信の質問に答えた。
彼によると、ロシア海軍の編制に、このタイプの艦が必要か否かを判断する権利は、我が国の最高指導者と国防省に属している。
しかし「統合造船業営団」は、業界へ、そのような課題が与えられた場合、それに対処する。
「インドへの航空母艦ヴィクラマーディティヤ輸出受注の経験は、確かに、以前に業界が持っていた実務経験の回復を手助けしました。
ソヴィエト連邦時代におけるこのような艦の建造の」
「そして今、疑いは有りません。我々の設計者、私達の工員は、この課題に対処できる事を」
「統合造船業営団」副総裁は話した。
[空母ヴィクラマーディティヤ(旧ブログ)]
[空母ヴィクラマーディティヤ]
[プロジェクト11430(ヴィクラマーディティヤ)]
航空母艦「ヴィクラマーディティヤ」は、元々はソヴィエト連邦海軍の重航空巡洋艦「バクー」としてウクライナの黒海造船工場で建造され、1978年12月26日に起工、1982年3月31日に進水、1987年12月30日に就役しました。




1990年10月4日、「アドミラル-フロータ-ソヴィエツカヴァ-ソユーザ・ゴルシコフ」と改名されました。
ソ連邦解体後は洋上へ出る事も無くなり、ムルマンスクに係留されました。

2004年1月20日にインドへ売却され、同年3月5日、ロシア海軍旗の降納式が行なわれました。
[「アドミラル・ゴルシコフ」海軍旗返納・その1]
[「アドミラル・ゴルシコフ」海軍旗返納・その2]
[「アドミラル・ゴルシコフ」海軍旗返納・その3]
[「アドミラル・ゴルシコフ」海軍旗返納・その4]
2005年11月30日、セヴェロドヴィンスクのセヴマシュ造船所の屋外特設造船台に入渠しました。
[空母ヴィクラマーディティヤ、ドック入り(2005年11月30日)・その1]
[空母ヴィクラマーディティヤ、ドック入り(2005年11月30日)・その2]
[空母ヴィクラマーディティヤ、ドック入り(2005年11月30日)・その3]
そして大規模な改造工事が始まりました。

この工事により、「ヴィクラマーディティヤ」の寿命は30年延長されました。
当初は2008年末にインドへ引き渡す予定でしたが、セヴマシュが水上艦に不慣れだった事と資金面の問題により、2012年末に延期されました。
「ヴィクラマーディティヤ」は2008年12月4日に再進水しました。
[インド空母「ヴィクラマーディティヤ」進水]
当初の契約価格は搭載機込みで15億ドルでしたが、ロシア側は作業量増大による増額を求め、最終的には23億ドルで合意されました。
[インド首相とロシア大統領は空母「ヴィクラマーディティヤ」問題について話し合う]
[インドは空母「ヴィクラマーディティヤ」の為に23億ドルを支払う]
2012年6月8日、「ヴィクラマーディティヤ」の航海試験が開始されました。
[インド空母ヴィクラマーディティヤは航海試験の為に出航した]
[インド空母ヴィクラマーディティヤの最初の航海試験は成功裏に完了する]
[インド空母ヴィクラマーディティヤの第2段階航海試験が実施された]
搭載機の試験も実施されました。
[艦上戦闘機MiG-29KUBはインド空母ヴィクラマーディティヤへ初着艦した]
当初は順調に進んでいた航海試験でしたが、機関の全力運転を実施した矢先に3基のボイラーが損傷し、2012年12月にインド海軍へ引き渡す予定は延期される事になりました。
ボイラー損傷の原因は、耐熱材としてアスベストの代わりに使われた耐火レンガでした。
[空母ヴィクラマーディティヤ、引渡し延期?]
[空母ヴィクラマーディティヤに使われている外国製品に問題が生じた]
航海試験は中止され、セヴェロドヴィンスクへ戻って修理を受ける事になりました。
[空母ヴィクラマーディティヤは23ノットでセヴェロドヴィンスクへ向かっている]
[空母ヴィクラマーディティヤ、セヴェロドヴィンスク入港(2012年9月23日)]
ボイラー損傷の原因となった断熱材の耐火レンガは、全てアスベストに交換される事になりました。
[インドは空母ヴィクラマーディティヤのボイラーへのアスベスト使用に同意した]
最新情報によると、「ヴィクラマーディティヤ」は、2013年4月下旬にドック入りします。
[空母ヴィクラマーディティヤは4月下旬から5月までドック入りする]
その後、2013年7月3日から航海試験を再開し、9月30日に終了、11月15日にはインドへ引き渡されます。
[空母ヴィクラマーディティヤは2013年9月30日に航海試験を完了し11月15日にインドへ引き渡される]
「ヴィクラマーディティヤ」搭載分の艦上戦闘機MiG-29K/MiG-29KUB(計16機)は、2011年12月末までに全機インドへ引き渡されています。
[空母「ヴィクラマーディティヤ」の為の艦上戦闘機MiG-29K/KUBの納入は2011年末までに完了する]
このMiG-29K/MiG-29KUBは、インド海軍航空隊の第303飛行隊「ブラックパンサーズ」に配備され、ハンザ航空基地(ダボリム空港)に駐留しています。
【第303飛行隊「ブラックパンサーズ」】

【ハンザ航空基地】

ソヴィエト連邦時代には、「航空母艦」はウクライナの黒海造船工場で建造されていました。
[ウクライナの黒海造船所はロシア海軍の近代化に参加する意向を示した]
航空艦の設計はレニングラード(サンクト-ペテルブルク)のネフスコィエ計画設計局が行ない、黒海造船工場はネフスコィエの指導により艦を建造するという体制が確立されていたのですが、ソ連邦解体により黒海造船工場はウクライナに接収され、この体制は瓦解しました。
サンクト-ペテルブルクのネフスコィエ計画設計局はロシアの手に残りましたが、ネフスコィエの手足となって空母を建造する造船所は失われました。
ソ連邦解体から10年以上が経ち、黒海造船工場に代わる新たな造船所、つまり、ネフスコィエの新たな手足として選ばれたのがセヴェロドヴィンスクのセヴマシュ造船所でした。
当然ながら、セヴマシュはネフスコィエの指導に従い、「ヴィクラマーディティヤ」の再建造工事を実施しました。
この大規模な改造工事~寿命の30年延長は実質的に空母の新造に等しい~の経験(失敗の経験も含め)により、セヴマシュは空母を建造する能力を得たと言えるでしょう。

なお、フランスの原子力空母「シャルル・ド・ゴール」も、航海試験では不具合が続出し、更にはスクリューが脱落するというトラブルに見舞われ、フランス海軍への就役は遅延に遅延を重ねています。
(当初は1996年の予定が1999年に延期、トラブル続きで2001年に延期)
フランスは1950年代末に「クレマンソー」級空母2隻を建造して以来、「シャルル・ド・ゴール」起工(1989年)までの約30年間、空母の建造経験が途絶えていました。

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