fc2ブログ

ロシアの造船所はミストラル級のような艦を独自に建造できる

『ロシア通信社ノーボスチ』より
2013年3月29日12時23分配信
【ロシアの造船所で「ミストラル」型のような艦の建造は可能である】
ランカウイ(マレーシア)、3月29日-ロシア通信社ノーボスチ

ロシア軍事造船所は、(ロシア)海軍の為に、外国の同類艦に劣らない独自の揚陸艦を建造する事は可能である。
金曜日、「統合造船業営団」副総裁イーゴリ・ザハロフは、記者団に伝えた。

「統合造船業営団は、軍艦ミストラル型の建造が最初の2隻に限定されるという決定を歓迎するでしょう。
国内企業の更なる発展という問題から」

彼は話した。

ロシア連邦海軍の為に2隻のヘリコプター空母「ミストラル」型を建造する為の12億ユーロの契約は2011年6月に署名された。
「ウラジオストク」と命名された最初の艦は2014年に、2隻目の「セヴァストーポリ」は2015年にロシア海軍へ軍備採用されるだろう。
これらの艦はロシアの専門技術者も参加し、フランスで建造されている。
ロシア連邦の分担分は、最初の艦で20パーセント、2隻目では40パーセントになる。

ザハロフ氏によると、ロシア造船所の為の「ミストラル」クラスの艦の設計及び建造、航空母艦の建造の決定が採択された場合、それは、ごく普通に達成可能な課題である。
「私共にとって、この課題に障壁は有りません。
国防省と海軍が汎用揚陸艦を必要とする場合、私共は、それを作成いたします」

「統合造船業営団」副総裁は表明した。

ザハロフ氏は、このクラスの艦のプロジェクトの開発には、フランスの同僚よりも更なる時間が必要になると指摘した。
彼は、ロシア企業におけるトップ艦の作成サイクルは、世界の有数の造船所に比べ、著しく長期に渡っている事を認識している。
これは、艦のコンセプトの定義、技術的課題の形成、組織の競争入札実施の遅延によるものであると営団の副総裁は説明した。

「私共は、速やかな艦の建造、価格上昇を低く抑え、契約の透明性、様々なコストの削減を実現いたします。
統合造船業営団の専門技術者は、新たな艦の建造期間の短縮化に懸命に取り組んでおります」

ザハロフ氏は締め括った。


[ヘリ空母(強襲揚陸艦)ミストラル級]
[ヘリ空母ミストラル型(旧ブログ)]
[ロシア海軍向けミストラル型の詳細が公表された]

というわけで、今回、ロシア造船業の総元締めである「統合造船業営団」副総裁は、ロシア海軍の為の「ミストラル」級の調達が2隻で終わるのならば歓迎すると表明しました。

当初の計画では、フランスサンナゼール造船所で2隻を建造し、ロシア国内の造船所で2隻をライセンス建造する事になっていたのですが、最近、「ロシアで建造する2隻」については見直しの動きが表面化しています。
[ロシアのミストラル級導入見直し問題]

正式には、まだ「ロシアで建造する2隻」はキャンセルされていませんが、事実上問題は先送りされております。

今回のザハロフ氏の発言を見ても、「統合造船業営団」は、ロシア海軍向けの「ミストラル」級の3隻目と4隻目を造る気は殆ど無いようです。
そんな事をするくらいなら、自国で一から設計して建造すべきだと。

仮に、ロシア国内で「ミストラル」級のようなヘリ空母を計画するのなら、その設計はサンクト-ペテルブルクネフスキー計画設計局が行なう事になります。
艦の建造は、サンクト-ペテルブルクバルト工場セヴェロドヴィンスクセヴマシュ造船所で行なわれる事になるでしょう。

ロシア海軍の為の「ミストラル」級の契約が締結される前、複数のロシア政府や海軍の幹部は、ロシア国内の造船所「ミストラル」級と同等の艦は独自に建造できると発言しています。

例えば、2009年11月には、ロシア副首相イーゴリ・セーチン氏が表明しています。
13-0331g.jpg
[ロシアは、「ミストラル」型と同クラスの艦を建造できる]

その後、イーゴリ・セーチン氏と統合造船業営団が組んで、「ミストラル」級の導入に対抗し、韓国「独島」級のロシアでのライセンス建造の話を持ち出してきました。


『軍事板常見問題』より
【質問】
ロシア海軍次期強襲揚陸艦の,「独島」案について教えてください.

【回答】
ロシアの統一造船会社(OSK),外国からの輸入を検討している次期強襲揚陸艦に,仏ミストラルではなく韓国の独島を選択すべきであると提言
【統合造船業営団は「ミストラル」購入を拒否し、韓国の類似物の取得を提案した】
【統合造船業営団は独島の建造を目指す】

大宇造船所とOSKが合弁会社を作り,ライセンス生産するという方式.
調達費用が安く,他の候補に比べて短期間で建造できるとしている.

国防省は,フランス以外の候補も検討しているとはしているが,国防省消息筋によると,有力候補は依然としてミストラルであるとしているとの事.
軍事板,2010/07/16(金)

・・・単なるパフォーマンス的な発言だと思うけどね.
まぁミストラルの売却に問題があれば,検討余地も残されているかもしれない.
CRS@空挺軍 in mixi,2010年07月16日14:08

その話は,先週あたりのコメルサントにも載っていたと思います.
サンクトペテルブルグの経済フォーラムで実際に,セーチン副首相と大宇の人があっているらしいので,まったくのガセでもないんでしょうが,本命はやはりミストラルでしょうね.
そもそも欲しいのは船体じゃなくて,戦闘情報システムの方みたいですし.
CCCP1917 in mixi,2010年07月16日 14:30

ええ.ドンガラだけなら要らない,アンコも寄越せ,ということらしいです.
そうなると,韓国の艦だってアンコはタレス製品だったりしますから,あまり旨味はないんですよね.
井上@Kojii.net in mixi,2010年07月16日 17:07


セーチン氏の以前の発言と併せて考えれば、「ミストラル」級導入の話を潰そうとしたのでしょう。

最近でこそ露骨に報じられるようになってきましたが、以前のロシア側の報道を見ても、その端々から、ロシアの造船業界は「ミストラル」級導入に消極的である事が伺えます。

「ミストラル」級の導入は、前ロシア国防相アナトリー・セルジュコフが周囲の反対を無視して強引に推し進めたものであり、それに対する反発が有るのは当然でしょう。

セーチン氏と統合造船業営団が組んで「独島」のライセンス建造の話を持ち出して来たのも、この一環だったと言えます。


以前には副首相セーチン氏が、つい最近では統合造船業営団副総裁ザハロフ氏が表明した「ロシア独自の汎用揚陸艦(ヘリ空母)」ですが、ソヴィエト連邦時代、この種の全通甲板ヘリコプター空母兼揚陸艦は2タイプが計画されています。

まずは1970年代末にコンテナ船「カピタン・スミルノフ」(プロジェクト1609)の設計を流用したヘリ空母が計画されました。
13-0331a.gif
[プロジェクト10200「ハルザン」]
満載排水量:31000t
全長:228.3m
最大幅:40.3m
吃水:8.9m
主機:ガスタービン
出力:50000馬力
速力:25ノット
航続距離:18ノットで12000海里
兵装:AK-630 30mmガトリング砲×8基
高射ミサイル複合体「キンジャール」×12基
搭載機:対潜ヘリコプターKa-27×28機
揚陸艦として使用する場合は輸送戦闘ヘリコプターKa-29×14機、戦車56輌、海軍歩兵隊員300名


しかし、このような艦を建造できるのはウクライナ黒海造船工場しか無く、当時、黒海造船工場での建造が計画されていた重航空巡洋艦プロジェクト11435と衝突し、汎用ヘリ空母重航空巡洋艦のどちらを建造すべきかという論争に発展しました。
「ハルザン」を推していたのは、当時のソ連軍参謀本部総長代理ニコライ・ニコラエヴィチ・アメリコ海軍大将(1914-2007年)でした。
13-0331e.jpg
その結果、アメリコ提督が負けて「ハルザン」は幻と消えました。
13-0331f.gif


1980年代、ネフスキー計画設計局は、プロジェクト1174大型揚陸艦の後継として全通甲板のヘリコプター揚陸艦を設計しました。
13-0331b.jpg
[汎用揚陸艦プロジェクト11780]
基準排水量:25000t
全長:196m
幅:25m/飛行甲板最大幅35m
吃水:8m
主機:蒸気タービン4基
出力:180000馬力
速力:30ノット
航続距離:8000海里
兵装:AK-130 130mm連装砲1基
高射ミサイル複合体「キンジャール」6基
高射ミサイル砲複合体「コールチク」4基
搭載機:輸送戦闘ヘリコプターKa-29×12機或いは対潜ヘリコプターKa-27×25機
搭載艇:プロジェクト1176揚陸艇4隻或いはプロジェクト1206エアクッション揚陸艇2隻


1番艦は「ヘルソン」、2番艦は「クレメンチュグ」と命名される予定でした。

11780は、アメリカ「タラワ」級強襲揚陸艦に似ていた事から、非公式には「イワン・タラワ」と呼ばれていました。
13-0331c.jpg
13-0331d.jpg
しかし、このような艦を建造できるのはウクライナ黒海造船工場しか無く、同工場は、当時、重航空巡洋艦の建造で手一杯だった為、幻と消えました。

更に、この2タイプは、垂直離着陸機(Yak-38と後継のYak-141)の運用も考慮されていました。
13-0331h.jpg
13-0331i.jpg


もしも、これらの艦が実際に黒海造船工場で建造されていれば、今頃は「アドミラル・クズネツォフ」「遼寧」も存在していなかったでしょう。
(当然、重原子力航空巡洋艦「ウリヤノフスク」も起工されなかった)
無論、艦上戦闘機Su-27K(Su-33)MiG-29Kも開発されていません。
その分、垂直離着陸機Yak-141の開発に集中される事になるでしょう。

そうなった場合、プロジェクト10200は1991年末のソ連邦解体までに2隻は就役していたでしょうが、プロジェクト11780は建造途中でソ連邦が解体され工事がストップするか、或いは1番艦が辛うじて就役できたといった所でしょう。
関連記事
スポンサーサイト