ロシア海軍の最新特殊用途原子力潜水艦(小型原潜母艦)ベルゴロド
- カテゴリ:ロシア海軍の特務原潜

『イズベスチヤ』より
2022年9月4日0時0分配信
【深い意味:原子力潜水艦「ベルゴロド」は海軍の能力をどう変えるのか】
そして、その無人水中装置はどのような任務を遂行するのか
9月1日、アメリカのメディアは、軍事専門家で元アメリカ合衆国陸軍士官ブレント・イーストウッドのロシア海軍の能力に関する意見を発表した。
彼によると、ロシア連邦は強力な潜水艦部隊を持っている。
そして、7月に海軍へ加入した最新原子力潜水艦~プロジェクト09852特殊用途原子力潜水艦BS-329「ベルゴロド」は、アメリカとって特別な脅威をもたらす。
独特な「ベルゴロド」は、国内潜水艦部隊の発展にどのような役割を果たすのかを『イズベスチヤ』の記事で読んで頂きたい。
[同類は無い]
潜水艦「ベルゴロド」は、ロシア国防省深海研究管理総局の発注により中央設計局『ルビーン』が開発し、セヴェロドヴィンスクの生産合同『セヴマシュ』で建造された。
今日において「ベルゴロド」は最も普通では無い潜水艦の内の1つであるだけでは無く、世界最大の戦闘潜水艦であると見られている。
その全長は184メートルになり、最大のプロジェクト941「タイフーン」水中ロケット艦よりも12メートル長い。
しかしながら「ベルゴロド」の特徴はその寸法では無く、その装備と用途に在る。
2018年3月1日の連邦議会での大統領演説で最初に発表されたユニークな水中兵器システム、2M39複合体「ポセイドン」は誰もが覚えているだろう。
それは巨大熱核魚雷とも呼ばれている。
実際、「ポセイドン」は核動力装置を持つ大陸間ロボット複合体である。
そして、これは魚雷以上である~それは複雑なプログラムにより、数ヶ月或いは数年に渡り、自国領海から数千キロメートル離れた場所において、殆どあらゆる深度で動作できる自動水中装置である。
このような戦闘システムの主な特徴は、強力な熱核弾頭により大型の沿岸及び海上の目標~艦の戦隊から海軍基地、沿岸地域及びメガロポリスまで~の破壊を保証する事に在る。
仮定の話で言えば、沿岸水域でのメガトン弾薬の爆発は、特定の場所へ新たなパナマ運河を作る事が出来る。
同時に「ポセイドン」は、世界の大洋の何処かの海底で何年にも渡り戦闘当直に就き、命令を受けるのを待つ事も出来るが、今そこで特殊潜水艦~搭載艦から目標へ使用する事も出来る。
生産合同『セヴマシュ』で現在建造中のプロジェクト09851潜水艦「ハバロフスク」は、将来の兵器システムの搭載艦になる事が予想される。
それは6基の「ポセイドン」発射装置を搭載する。
しかし、「ハバロフスク」とその兄弟が海軍へ加わる前に兵器システムをテストし、その使用方法を研究し、高度の技術実験モデルから現実の兵器へ変換する必要が有る。
これらの課題を遂行する為、特殊用途潜水艦BS-329「ベルゴロド」は水中複合体2M39「ポセイドン」の最初の試験搭載艦となる事が意図されている。
2012年、国防省はプロジェクト09852実験潜水艦の建造契約へ署名した。
セヴェロドヴィンスクに残っていた未完成の「航空母艦キラー」の中で、プロジェクト949A潜水艦「ベルゴロド」の未完成の船体がベースとなった。
数隻の同プロジェクト潜水艦の建造は1990年代に凍結された。
艦の船体は、将来兵器システムと、その為の機器により課される要件を考慮に入れて大幅に変更された。
「ベルゴロド」の特徴は、「ポセイドン」の為のみならず、深海の有人無人水中装置及び自動無人水中装置の搭載艦としての勤務が意図されている事に在る。
「ベルゴロド」は、大洋の辺境海域で様々な科学研究を行ない、様々な水中機器の設置や、以前に設置された水中システムの検査及び交換を行なえるユニークな水中プラットフォームである。
最も重要なのは、「ベルゴロド」の艦底には原子力深海ステーション~ロシア海軍のみに存在する種類の潜水艦であり、特殊大型搭載潜水艦で送り届けられた海域で殆どあらゆる深度で任務を遂行できる~を収容する為の特別なドッキング区画が在る事である。

[全てのケースで]
「ベルゴロド」のような水中巡洋艦が如何なる可能性を持っているのかは想像できる。
先ず第一に、世界の大洋のあらゆる海域における戦闘水中ドローン「ポセイドン」の試験と使用。
第二に、勤務モードでは下位に在る「ポセイドン」の特殊小型無人装置を使用したメンテナンス。
第三に、理論的にはロシアの大陸棚へ展開できる大洋自動水中攻撃警告システムの運用。
このようなシステムの設備を設置し、維持する必要が有るので、このようなシステムの動力源を更新する必要が有る。
そして、ここではドローンを持つ「ベルゴロド」は欠かせない。
最後の第四に、原子力深海ステーションの使用能力により、「ベルゴロド」は偵察から科学研究までのあらゆる特殊任務を海底で遂行できる。

2012年12月20日、セヴェロドヴィンスクの生産合同『セヴマシュ』の第55作業所でK-329「ベルゴロド」はプロジェクト09852の下で再起工され、世界初の戦闘ドローン水中搭載艦の作成作業が始まった。
2019年4月、潜水艦は造船台から出渠し、艤装とその後の試験の為に進水した。
1年と少し前の2021年6月25日、「ベルゴロド」は初めてセヴェロドヴィンスクを去り、白海で航行試験へ入った。
そして最後に、2022年7月8日、未だ無人原子力水中装置「ポセイドン」と主要兵装複合体をテストする事無く特殊潜水艦は海軍へ引き渡された。
今、「ベルゴロド」は「ポセイドン」の試験台となり、その輸送、射出、制御、誘導への取り組みが控えている。
無論、「ポセイドン」は強力な熱核弾頭を搭載するだけでは無く、多くの完全に平和的な機能~偵察及び監視から科学調査及び貨物輸送の為の観測まで~の実行を学習できる。
しかし、今のところ我々は、新たなタイプの水中システムの軍事使用のみを知っている。
そして核兵器システムとしての「ポセイドン」は「ベルゴロド」で試験が行なわれ、その後で「ハバロフスク」型潜水艦へ配備される。
現在、潜水艦「ハバロフスク」は、北方艦隊と太平洋艦隊に駐留する事が既に知られている。
戦闘システムの軍備採用は、試験プログラムの遂行後にのみ確実に行なわれる~戦闘システムは新しすぎ、そして複雑すぎる事が分かっているので。
このような試験は、3~5年は掛かると予測できる。
そして、この数年で「ポセイドン」は、その最初の搭載艦~今日において国内海軍にも海外にも同じものが無い特殊原子力潜水艦BS-329「ベルゴロド」と共に作業を行なう。

プロジェクト949A「アンテイ」(オスカーII)原子力水中巡洋艦K-329「ベルゴロド」は、1992年7月24日にセヴェロドヴィンスク市の生産合同『北方機械製造事業』(セヴマシュ)で起工されましたが、2006年に完成度80パーセント程度で建造工事は凍結されました。
[オスカーII型原潜最終艦、建造中止?]
[未完のオスカーII型原潜ベルゴロド]
[オスカーII級原潜「ベルゴロド」の建造は停止される]
その後、「ベルゴロド」は特殊用途原子力潜水艦へ改造されることになりました。
[オスカーII級原潜「ベルゴロド」は特殊作戦母艦として完成する]
[オスカーII級原潜「ベルゴロド」は完成する]

2012年12月20日、「ベルゴロド」は、原子力調査潜水艦プロジェクト09582として、『セヴマシュ』で改めて「起工」されました。
[調査原潜プロジェクト09852は起工された]

当初、「ベルゴロド」は、2018年末までにロシア海軍へ引き渡される予定でしたが、その後、引き渡しは延期され、2018年末までの進水予定も実現しませんでした。
[原子力科学調査潜水艦ベルゴロドは2018年にロシア海軍へ引き渡される]
[ロシア海軍の為の原子力科学調査潜水艦ベルゴロドは2018年末までに進水する]
「ベルゴロド」は、無人潜水艇「クラヴェシン-2」などの有人或いは無人の各種潜水艇を搭載します。
[ロシア海軍の新型無人潜水艇クラヴェシン-2の試験はクリミア半島のフェオドシヤで行なわれている]
この他、現在開発中の大洋多目的システム「ポセイドン」(深海原子力無人機)の搭載母艦としての役割も果たします。
[大洋多目的システム「ポセイドン」]

更には「原子力深海ステーション」、即ち深海調査用の小型特務原子力潜水艦も搭載できます。
[ロシア海軍の特殊用途原子力潜水艦ベルゴロドは深海調査用小型原子力潜水艦を搭載する]
「ベルゴロド」は元のプロジェクト949Aよりも船体が30メートル延長され、全長は世界最大の潜水艦プロジェクト941(タイフーン級)よりも10メートル以上長い184メートルとなりました。
(941は172メートル)
プロジェクト941重戦略用途原子力ロケット水中巡洋艦

2019年4月23日、「ベルゴロド」は『セヴマシュ』で進水しました。
[ロシア海軍の為の特殊用途原子力潜水艦ベルゴロドは進水した]
「ベルゴロド」は、2020年にロシア海軍への引き渡しが予定されていました。
[特殊用途原子力潜水艦ベルゴロドは2020年6月に洋上試験を開始し、同年9月にロシア海軍へ引き渡される]
しかし、コロナウイルス流行による遅延(『セヴマシュ』でも感染者が出た)などの理由により、2020年中に洋上試験を開始する事すら実現できず、引き渡しは2021年に延期される事になりました
[セヴェロドヴィンスク造船所で建造されている特殊用途原子力潜水艦ベルゴロド、原子力水中巡洋艦カザンとノヴォシビルスク、戦略用途原子力水中巡洋艦クニャージ・オレグは2021年にロシア海軍へ就役する]


2021年6月25日、「ベルゴロド」は白海へ出航し、最初の洋上試験(工場航行試験)を開始しました。
[ロシア海軍の為の特殊用途原子力潜水艦ベルゴロドは洋上試験の準備を進めている]
[ロシア海軍の特殊用途原子力潜水艦ベルゴロドは洋上試験を開始した]
「ベルゴロド」は7月24日にセヴェロドヴィンスクへ帰投しました。

[ロシア海軍の特殊用途原子力潜水艦ベルゴロドは最初の洋上試験を終えてセヴェロドヴィンスクへ帰投した]
「ベルゴロド」のロシア海軍への引き渡しは2021年末に予定されていましたが、同年中に洋上試験を完了させる事が出来なかった為、2022年に延期されました。
[ロシア海軍の特殊用途原子力潜水艦ベルゴロドの洋上試験は2021年9月に完了する]
[ロシア海軍の為の特殊用途原子力潜水艦ベルゴロドは2022年に洋上試験を完了する]
2022年6月下旬、「ベルゴロド」は最終洋上試験となる国家試験を開始しました。
[ロシア海軍の特殊用途原子力潜水艦ベルゴロドはバレンツ海で最終洋上試験を行なっている]
国家試験を終えた後にセヴェロドヴィンスクへ戻り、2022年7月8日に就役式典が開催され、BS-329「ベルゴロド」はロシア海軍へ引き渡されました。



[プロジェクト09852特殊用途原子力潜水艦ベルゴロドはロシア海軍へ就役した]
就役後、「ベルゴロド」は先ず北方艦隊で試験運用を行ない、その後、太平洋艦隊へ配備されます。
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