ロシア海軍の原子力潜水艦が地中海へ派遣された
- カテゴリ:地中海情勢(2022年-)

『NAVAL NEWS』より
2022年9月2日配信
【新たな情報:ロシアは地中海へ原子力潜水艦を派遣した】
原子力潜水艦は、ロシア海軍で最も強力で、最も残存可能な資産である。
ウクライナ戦争での海軍の劇的な損失を背景にして、それは舞台袖のエースである。
現在、原子力潜水艦は地中海でNATO軍と「猫と鼠の追いかけっこ」をしているようだ。
ウクライナ侵攻の一環としてロシア海軍が黒海の部隊を増強した事はよく知られている。
あまり話題にならないが地中海で築き上げられたものは、黒海作戦の外側の防御と見られる。
ロシアのドクトリンに従って、これはNATOの戦争への関与に対する抑止力の一部を形成している可能性が有る。
現在、原子力潜水艦が混合部隊へ追加されているようである。
『NAVAL NEWS』は、ロシアの攻撃潜水艦(SSN)或いは巡航ミサイル潜水艦(SSGN)がイタリア付近で行動している強い兆候を見た。
潜水艦がそこ(地中海)でどの程度の期間運用されているのかは不明である。
最もストレートな説明は、8月24日に地中海を去ったスラヴァ級巡洋艦「マルシャル・ウスチーノフ」に代わって配備されたという事である。

「ウスチーノフ」が連合王国とアイルランドの間を挑発的に航行している間に潜水艦が地中海へこっそり入った事も考えられる。
ある意味、巡洋艦は注意を逸らしていると言える。
しかしながら、NATOの関心は潜水艦へ移ったようである。
そして、オープン・ソース・インテリジェンス(OSINT)アナリストも。
今の所、潜水艦のタイプは分からない。
そしてそれは、公共の情報源では決して知る事は出来ないかもしれない。
私達は、それ(潜水艦)が原子力推進である事を確信しており、状況から多くの事を推測できる。
ロシアは以前にも、頻繁にでは無いが地中海へ原子力潜水艦を配備した事が有る。
今の状況だと、それはウクライナ戦争に関連する。
最近のセルビア-コソボ紛争も近くにある。
[潜水艦のタイプは?]
潜水艦の一般的なタイプは 3つに絞り込める。
攻撃原子力潜水艦(SSN)の可能性が高い。
ロシアで運用されている主なタイプはアクラ級だが、シエラ-I/II、ヴィクター-III級も有る。


戦争初期に、OSINTアナリストは、ロシアの攻撃原子力潜水艦が地中海で運用されている兆候を見い出した。
これは普通の事では無く、時間枠を考えれば、その潜水艦は去っていなければならない。
或いは、潜水艦はオスカーII級巡航ミサイル潜水艦(SSGN)かもしれない。

これらは24基の強力なグラニート(SS-N-19「シップレック」)超音速対艦ミサイルで武装している。
これらは古い潜水艦では有るが、依然として手強い対空母プラットフォームであり、「ウスチーノフ」よりも優れている。
最後に考えられるのは、ロシア海軍最新のセヴェロドヴィンスク級(別名「ヤーセン」)SSGNの内の1隻かもしれない。
これらは対艦及び対地攻撃任務の双方を遂行できる遥かに近代的な巡航ミサイルを搭載している。
それは、より静粛で、より強力である。
多くの点において、セヴェロドヴィンスク級はロシアの在庫で最も有能である。
これらの潜水艦の内の1隻でリード潜水艦のセヴェロドヴィンスク(K-560)は、7月にはサンクトペテルブルクに居た。

8月にアクラ級潜水艦「ヴェプリ」(K-157)と共にバルト海を去った。
ロシアは既に地中海に2隻の改キロ級潜水艦を持っている。
これらはシリアのタルトゥースのロシア海軍基地に居る。
対艦及び対地攻撃巡航ミサイル「カリブル」で武装した有能な潜水艦ではあるが、原子力潜水艦よりも遥かに制限されている。
彼らは侵攻前からシリアへ派遣され、現在は多くの時間を港で過ごしている。
より多くの情報が表に出てくるかもしれない。
しかし、潜水艦の世界と同じように、詳細は掴めないままだろう。
記事中で触れられていますが、2022年2月初頭から地中海に滞在していたロシア北方艦隊のロケット巡洋艦「マルシャル・ウスチーノフ」、大型対潜艦「ヴィツェ・アドミラル・クラコーフ」、中型海洋給油船「ヴャジマ」は、8月24日~25日にジブラルタル海峡を通過して地中海を去りました。
[ロシア海軍北方艦隊のロケット巡洋艦マルシャル・ウスチーノフと大型対潜艦ヴィツェ・アドミラル・クラコーフは地中海を去った]
同じ頃(8月24日)、北方艦隊の中型海洋給油船「アカデミック・パシン」が入れ違いに地中海へ入りました。
8月5日現在、キプロス島の南東沖を東進しています。
現在、地中海には、少なくとも以下のロシア海軍の艦船が滞在しており、地中海作戦連合部隊(2013年6月1日創設)の指揮下で行動しています。
[黒海艦隊]
潜水艦「クラスノダール」:2021年9月中旬から地中海に滞在
潜水艦「ノヴォロシースク」:2021年12月末から地中海に滞在
フリゲート「アドミラル・グリゴロヴィチ」:2021年10月末から地中海に滞在

小型ロケット艦「オレホヴォ・ズエヴォ」:2022年1月下旬から地中海に滞在
対機雷防衛艦「ウラジーミル・イェメリヤノフ」:2022年1月下旬から地中海に滞在

海洋曳船「セルゲイ・バルク」:2022年1月下旬から地中海に滞在

対工作艇P-191「カデート」:2021年11月上旬から地中海に滞在
[太平洋艦隊]
親衛ロケット巡洋艦「ワリャーグ」:2022年2月初頭から地中海に滞在
大型対潜艦「アドミラル・トリブツ」:2022年2月初頭から地中海に滞在
大型海洋給油船「ボリス・ブトマ」:2022年2月初頭から地中海に滞在
[北方艦隊]
フリゲート「アドミラル・カサトノフ」:2022年2月中旬から地中海に滞在
救助曳船SB-406:2022年2月中旬から地中海に滞在
中型海洋給油船「アカデミック・パシン」:2022年8月下旬から地中海に滞在
[バルト艦隊]
工作船PM-82:2022年3月末から地中海に滞在
中型偵察艦「ワシーリー・タチシシェフ」:2022年5月末から地中海に滞在
この内、「ワリャーグ」、「アドミラル・トリブツ」、「アドミラル・グリゴロヴィチ」、「ワシーリー・タチシシェフ」は地中海中央部のアドリア海でNATO艦隊と対峙しています。
[ロシア海軍の軍艦はアドリア海に居る]
この他、地中海でロシア北方艦隊の原子力潜水艦が行動しているのではないかと見ている専門家も少なくないようです。
記事中で触れられている北方艦隊の原子力水中巡洋艦「セヴェロドヴィンスク」と原子力巡洋潜水艦「ヴェプリ」は、2022年7月31日の『ロシア海軍の日』にクロンシュタットの観艦式(主要海軍パレード)へ参加しています。


[ヤーセン級原子力水中巡洋艦セヴェロドヴィンスクと原子力巡洋潜水艦ヴェプリは2022年7月31日のロシア海軍の日にクロンシュタットの観艦式へ参加する]
観艦式が終わった後、8月初頭にクロンシュタットを出航し、「ヴェプリ」は8月5日、「セヴェロドヴィンスク」は8月6日にバルト海を出て北海へ入りました。
『The Barents Observer』より
2022年8月7日配信
【ノルウェーの外のロシア潜水艦】
その後は母港へ帰投したようですが、再び出航して地中海へ向かった可能性はゼロとは言えないでしょう。
北方艦隊の949A原子力水中巡洋艦は、2016年12月に地中海東部へ派遣されています。
[ロシア海軍の巡航ミサイル原潜は地中海東部に居る?]
ロシア海軍が地中海に原子力潜水艦が居る事を公表した事は滅多に有りませんが、2013年1月下旬に地中海東部と黒海で3艦隊(黒海艦隊、バルト艦隊、北方艦隊)合同演習が行なわれた際、地中海に原子力潜水艦1隻が居る事が明らかにされています。
[ロシア海軍3艦隊合同演習には20隻の水上艦船と3隻の潜水艦が参加する]
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