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ルビーン設計局はロシア海軍の通常動力潜水艦の為の非大気依存発電装置(改質型燃料電池)の開発を進めている

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『ロシア通信社ノーボスチ』より
2022年10月10日11時0分配信
【アンドレイ・バラノフ:中央設計局『ルビーン』は将来潜水艦の隠密性を増加させる】
ロシア潜水艦設計局である海洋工学中央設計局『ルビーン』の対外経済活動・軍事技術協力担当副総取締役アンドレイ・バラノフへのインタビュー。
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この中で、『ルビーン』が開発中の非大気依存発電装置(改質型燃料電池)についても触れています。

インタビュアーロシア連邦海軍指導部は、 新たな通常動力潜水艦嫌気性(非大気依存)発電装置の配置を計画しております。
しかしながら、非大気依存発電装置自体は未だ有りません。
この方面での作業はどう進められているのでしょうか?

バラノフ非大気依存発電装置は作業中であり、『ルビーン』はこの試験設計作業の実行者です。
国家契約に基づき、フルスケールの海上区画の形で稼働する設備を作成する為の(時期の)境目が定められています。

インタビュアー非大気依存発電装置の作成には、海洋機械製造局『マラヒート』も参加しています。
アプローチに違いは有るのでしょうか?

バラノフ:概念レベルでは、(違いは)有りません。
あらゆる非大気依存発電装置は信頼でき、安全で、長期の隠密性を保障しなければならず、つまりは先ず第一に静粛で待機と接触しない水中航行です。
しかしながら、そのような非大気依存発電装置を作成する方法には、様々なアプローチが有るでしょう。
我々は、ディーゼル燃料から水素を受け取る燃料電池に基づく非大気依存発電装置を作成しています。
酸素水素からを得て電気を放出します。
最も難しい問題は、水素を何処から入手するのか?
それは持ち運びが面倒であり、積み込みは難しく危険です。
従いまして、私共はディーゼル燃料からそれ(水素)を得る事を提案しており、この方式は改質と呼ばれています。
このような方式の非大気依存発電装置を我々は推し進めています。
我々のアプローチは、隠密性、簡単な配置、そして国内艦隊にとって重要な他のパラメータの点において有望であると考えております。

『マラヒート』は別の道~閉サイクルタービンを選びました。
同僚の作業の評価は、海軍の組織的な関心~2種類の装置の開発により、重要なものを見逃さず、非常に複雑な技術的問題について本当に最適な解決法を得る~が明らかである事から、適切では有りません。
同様の事は、原子力潜水艦の為の最初の原子炉の作成でも有りました~加圧水型原子炉液体金属冷却原子炉の作業は、ほぼ並行して行なわれました。
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非大気依存発電装置の作成の道は他にもありますが、それぞれに長所と短所があります。
西側の改質非大気依存発電装置では、水素メタノール或いはエタノールから得る事が計画されています。
ですが私共は、この解決法は最適では無いと考えております。

インタビュアー非大気依存発電装置の作成にあたり、貴方達の作業はもっぱら単独ですか?それとも協力でしょうか?

バラノフ:私共は、クルイロフセンターと共に作業を行なっております。
彼らのコンセプトも同様に燃料電池に基づいておりますので。

インタビュアー:幾つかの国、例えば日本では、潜水艦非大気依存発電装置の代わりにリチウムイオン電池の使用へ切り替えました。
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これは非大気依存発電装置の歴史に終止符を打つのでしょうか?

バラノフ:討論は開かれており、その質問自体でさえ議論できます。
確かに日本は新たな潜水艦リチウムイオン電池を使用しておりますが、その運用経験は非常に少なく、非大気依存発電装置の歴史が終わるとの結論を出すのは時期尚早です。
私共は、一方と他方の利点の組み合わせ、つまり非大気依存発電装置リチウム電池を持つことを提案しております。
とは違って、リチウムは非常にエネルギー効率が高く、充電及び放電サイクルにおける不調が少ないという特徴がありますので。
リチウムイオン電池は大きな柔軟性を備えており、電力の変化や、潜水艦の移動速度を迅速に増加或いは減少できます。

ですが、リチウム電池は爆発しやすい事を理解する必要が有ります。
以前、このようなバッテリーを搭載した携帯電話が爆発した事を覚えていますか?
今、この問題は解決されています。
従いまして、現在、私達は、その可能性を興味深く見ており、我々が、排水量約600トン、強力なリチウムイオン電池により17日間の水中自立性を得られるプロジェクト"アムール-600"を提案したのは偶然では有りません。

インタビュアー:そして、最終的な結論はどうなりましょうか?

バラノフ:決定は海軍に依ります。



『ルビーン』は、2000年代から通常動力潜水艦の為の新たな非大気依存発電装置(AIP機関)改質型燃料電池の開発を進めています。
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この改質型燃料電池は、2011年12月初頭に陸上試験の最初の段階を終えています。
[ロシアは新たなAIP機関の試験を終えた]

その後も陸上試験は続けられました。
[ロシア海軍の新世代潜水艦の為のAIP機関の試験は進んでいる]

陸上試験モデルの試験は、ほぼ完了しており、今後は、海上用試験モデル、つまり、実際に潜水艦などへ搭載する非大気依存発電装置が作られます。
[ロシア海軍の通常動力潜水艦の為の非大気依存発電装置(AIP)の洋上試験の準備は進められている]
[ロシア海軍の通常動力潜水艦の為の非大気依存発電装置(改質型燃料電池)は2023年末に作成される]

今後建造されるロシア第5世代通常動力潜水艦「カリーナ」級には、このAIP機関が搭載されます。
[ロシア第5世代通常動力潜水艦プロジェクト「カリーナ」]


この他、ロシアのもう1つの潜水艦設計局であるサンクトペテルブルク海洋機械製造局『マラヒート』は、閉サイクル・ガスタービン型AIP機関を開発しています。
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[サンクトペテルブルクのマラヒート設計局は通常動力潜水艦の為の閉サイクルガスタービン非大気依存発電装置の試験を続けている]

ロシアは、以前に潜水艦用の燃料電池「クリスタール」を試作していますし、ソヴィエト連邦時代の1950年代には、閉サイクル機関搭載のプロジェクト615潜水艦を建造しています。
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現在開発中の2種類のAIPは、これらの流れを汲むものと言えるでしょう。


この他、『ルビーン』は、潜水艦用のリチウムイオン電池の開発も進めており、2014年12月には陸上での試験に成功しています。
[ロシアは潜水艦用のリチウムイオン電池の試験に成功した]

リチウムイオン電池搭載の小型潜水艦「アムール e600」の開発も進めています。
[ルビーン設計局はリチウムイオン電池潜水艦アムール e600を開発する]

ただ、今回のアンドレイ・バラノフ氏の発言を見る限り、例えば日本海上自衛隊潜水艦のように完全なリチウムイオン電池への切り替えには懐疑的のようです。
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