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ロシア海軍の最新極超音速対艦ミサイル「ツィルコン」の地上発射型の開発が進められている

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『タス通信』より
2022年11月4日9時35分配信
【ロシアは極超音速ミサイル「ツィルコン」の為の移動式発射装置を開発した】
モスクワ、11月4日/タス通信

ロシア防衛産業複合体企業は、最新極超音速ミサイル「ツィルコン」を搭載する沿岸ミサイル複合体「鉄の」移動式発射装置を開発し、製造している。
『タス通信』軍当局に近い情報筋より伝えられた。

「極超音速ミサイル ツィルコンを搭載する沿岸ミサイル複合体の移動式発射装置のプロトタイプは既に作成されています。
沿岸ミサイル複合体バスチオンのように、発射装置は2基のミサイルを搭載します」

彼は話した。
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対談者によると、ミサイル「オーニクス」を搭載する複合体「バスチオン」と同様、新たな複合体の発射装置は4輪車である。

『タス通信』は、この情報を公式に確認していない。

以前に『タス通信』は、軍当局に近い情報筋の談話を引用し、ロシア極超音速ミサイル「ツィルコン」の為の沿岸ミサイル複合体の開発を進めていると報じた。
それは2022年が終わるまでには海軍へ軍備採用されると予測されている。
他の情報筋によると、ミサイル「ツィルコン」を搭載する沿岸ミサイル複合体は、その前任の複合体「バスチオン」と同様に水上及び地上の目標への攻撃能力を有している。

以前、「ツィルコン」の国家試験は水上搭載艦~フリゲート「アドミラル・フロータ・ソヴィエツカヴァ・ソユーザ・ゴルシコフ」から行なわれた。
2021年には更に、水中搭載艦~原子力潜水艦「セヴェロドヴィンスク」からのミサイルの試験が始まった。

ミサイル「オーニクス」及び「ツィルコン」は、レウトフ科学生産合同『機械製造』(ロシア機械製造連合のメンバーであるコーポレーション『戦術ミサイル兵器』へ加入)が開発及び製造している。



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極超音速対艦ミサイル「ツィルコン」(ジルコン、風信子石)は、以前に長距離超音速有翼ミサイル「バザーリト」/「ヴルカーン」「グラニート」、そして超音速ミサイル「オーニクス」を開発した科学生産合同『機械製造』が新たに開発しているミサイルです。

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[長距離打撃ミサイル複合体バザーリト/ヴルカーン]

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[有翼ミサイル複合体グラニートは軍備採用30周年を迎えた]

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[ロシア海軍の超音速対艦ミサイル「オーニクス」は1年間に数十基製造される]

科学生産合同『機械製造』は、長距離超音速有翼ミサイル「グラニート」の直接の後継となる筈だった「ボリード」(最大射程800km、飛翔速度マッハ4)の開発を1980年代末から開始し、1991年にはエンジンの最初の試験が行われたのですが、1990年代末には開発は中止されました。

「ツィルコン」の開発には、「ボリード」の開発作業の経験もフィードバックされているようです。


「ツィルコン」の発射試験は、2015年秋頃から始まりました。
[ロシア海軍の為の極超音速巡航ミサイル"ツィルコン"の試験が始まった]

初期の「ツィルコン」の発射試験は、アルハンゲリスク州ネノクサ村に在るロシア海軍ミサイル発射試験場で行なわれており、初期には失敗した事も有るようです。
[ロシア海軍の為の巡航ミサイルは試射中にアルハンゲリスク州ネノクサ村の住宅へ落下した]
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「ツィルコン」の発射試験は秘密裡に行なわれ、2016年4月に行なわれた試験では最大速度マッハ8を記録しました。
[ロシア海軍の為の極超音速対艦ミサイル"ツィルコン"は発射試験で最大速度マッハ8に達した]

ネノクサ村ミサイル発射試験場からの「ツィルコン」発射試験は、10回以上行なわれました。
[ロシア海軍の為の極超音速対艦ミサイル"ツィルコン"は10回以上の発射試験を行なった]

地上からの発射試験に続き、海上での発射試験が北方艦隊プロジェクト22350フリゲートの1番艦「アドミラル・ゴルシコフ」(2018年7月28日就役)により行なわれる事になりました。
[ロシア海軍の新たな極超音速対艦ミサイル"ツィルコン"は2019年末にフリゲート"アドミラル・ゴルシコフ"で洋上発射試験を行なう]

2020年1月初頭、「アドミラル・ゴルシコフ」バレンツ海「ツィルコン」の発射試験を行ないました。
ミサイルは500キロメートル以上を飛翔し、北ウラルの地上目標へ命中しました。
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[ロシア海軍北方艦隊の最新鋭フリゲート"アドミラル・ゴルシコフ"は2020年1月に極超音速ミサイル"ツィルコン"の発射試験を行なった]

「アドミラル・ゴルシコフ」からの2回目の「ツィルコン」発射試験は、当初は2020年春に実施される予定であり、同艦は2020年4月初頭にセヴェロドヴィンスクへ回航され「ツィルコン」の運用(発射)に関する部分的な近代化改装が行なわれました。
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[ロシア海軍のプロジェクト22350(アドミラル・ゴルシコフ型)フリゲートは近代化される]

しかし、発射試験はコロナウイルスの影響により何度も延期されました。
[ロシア海軍北方艦隊の最新フリゲート"アドミラル・ゴルシコフ"は白海で演習を行なう]

結局、白海で2回目の「ツィルコン」発射試験(海上目標に対しては初)が実行されたのは、2020年10月6日になりました。

[ロシア海軍北方艦隊の最新鋭フリゲート"アドミラル・ゴルシコフ"は海上目標への極超音速ミサイル"ツィルコン"発射試験を行なった]

11月26日、「アドミラル・ゴルシコフ」白海から3回目の「ツィルコン」発射試験(海上目標に対しては2回目)を実行しました。
公表された動画を見る限り、発射は夜間(おそらくは11月25日深夜~11月26日未明)に実施されたようです。

[ロシア海軍北方艦隊の最新鋭フリゲート"アドミラル・ゴルシコフ"は白海からバレンツ海の海上目標へ極超音速ミサイル"ツィルコン"を発射した]

12月11日、「アドミラル・ゴルシコフ」白海からチジャ射爆場の地上目標へ「ツィルコン」発射試験を実行しました。

[ロシア海軍北方艦隊の最新鋭フリゲート"アドミラル・ゴルシコフ"は白海から極超音速ミサイル"ツィルコン"を地上へ発射した]

2020年の「ツィルコン」発射試験は、全て成功と認められました。
具体的には、「驚くべき」命中精度を示したという事のようです。
[2020年の極超音速対艦ミサイル"ツィルコン"発射試験は全て成功と認められた]

2021年7月19日、「アドミラル・ゴルシコフ」白海からバレンツ海の地上目標(距離350km以上)への「ツィルコン」発射試験を実施しました。

[ロシア海軍北方艦隊のフリゲート"アドミラル・ゴルシコフ"は白海からバレンツ海の地上目標へ極超音速ミサイル"ツィルコン"を発射した]

なお、2021年8月23日には、「ツィルコン」の供給契約が締結されています。
『タス通信』より
2021年8月24日19時37分配信
【国防省は極超音速ミサイル「ツィルコン」供給契約を締結した】

一方、原子力水中巡洋艦「セヴェロドヴィンスク」による水中からの発射試験は2021年9月の実施が予定されていましたが、10月にずれ込みました。
[ロシア海軍北方艦隊の原子力水中巡洋艦セヴェロドヴィンスクは2021年9月に極超音速ミサイル"ツィルコン"発射試験を開始する]

10月3日、「セヴェロドヴィンスク」は浮上状態で「ツィルコン」を海上目標へ発射しました。

翌10月4日には潜航状態で「ツィルコン」を海上目標へ発射しました。

[ロシア海軍北方艦隊の原子力水中巡洋艦セヴェロドヴィンスク、水中から極超音速ミサイル"ツィルコン"発射(2021年10月4日)]

「ツィルコン」の水上試験艦であるフリゲート「アドミラル・ゴルシコフ」は、11月18日に白海から海上目標へ「ツィルコン」を発射しました。

[ロシア海軍北方艦隊のフリゲート"アドミラル・ゴルシコフ"は白海の海上目標へ極超音速ミサイル"ツィルコン"を発射した]

11月29日にも「アドミラル・ゴルシコフ」白海から「ツィルコン」を海上目標へ発射しました。

[ロシア海軍北方艦隊のフリゲート"アドミラル・ゴルシコフ"は再び海上目標へ極超音速ミサイル"ツィルコン"を発射した]

12月16日、「アドミラル・ゴルシコフ」白海からチジャ射爆場の地上目標へ「ツィルコン」を発射しました。
[ロシア海軍北方艦隊のフリゲート"アドミラル・ゴルシコフ"は地上目標へ極超音速ミサイル"ツィルコン"を発射した]

そして12月24日、ロシア大統領ウラジーミル・プーチン氏は、産業貿易相デニス・マントゥロフ氏や安全保障会議副議長ドミトリー・メドベージェフ氏などが参加するリモート会議の席上で、同日朝(モスクワ時間5時30分)に「ツィルコン」の一斉発射試験、つまり2発以上のミサイルの同時発射に成功したと発表しました。
[ロシア海軍は極超音速ミサイル「ツィルコン」の一斉発射試験に成功した]
プーチン大統領は、それ以上具体的な事は明らかにしませんでしたが、この発射試験も「アドミラル・ゴルシコフ」白海から実施した事は間違いないでしょう。
何処へ向けて発射したのかも明言されていませんが、順当に行って海上目標でしょう。

これで水上発射型「ツィルコン」の国家試験は完了し、国家委員会はロシア海軍「ツィルコン」の軍備採用を勧告しました。
[国家委員会はロシア海軍へ極超音速ミサイル「ツィルコン」水上発射型の制式採用を勧告した]

2022年2月19日に実施されたロシア連邦軍戦略抑止力演習の最中、フリゲート「アドミラル・ゴルシコフ」バレンツ海「ツィルコン」を海上目標へ発射しました。

[ロシア連邦軍戦略抑止力演習でロシア海軍の北方艦隊と黒海艦隊は、弾道ミサイルと巡航ミサイル、極超音速ミサイルを発射した]

2022年5月28日、フリゲート「アドミラル・ゴルシコフ」バレンツ海から「約1000km」離れた白海の海上標的へ「ツィルコン」を発射しました。
ただし、約(около)1000kmですから、実際には700km~800km程度でしょう。

[ロシア海軍のフリゲート「アドミラル・ゴルシコフ」、距離約1000kmの海上標的へ極超音速対艦ミサイル「ツィルコン」を発射(2022年5月28日)]

おそらく、この時の発射試験では偵察衛星(グローバル海上偵察衛星ピオン-NKS)が目標指示に使われています。
[ロシア海軍のグローバル海上偵察衛星ピオン-NKSは運用を開始した]
[ロシア海軍の極超音速ミサイル"ツィルコン"は航空機や偵察衛星と連動する]

水上発射型「ツィルコン」は2022年末までに軍備採用(制式採用)されます。
[極超音速対艦ミサイル「ツィルコン」水上発射型は2022年末にロシア海軍へ制式採用される]


北方艦隊では、既に「ツィルコン」の保管倉庫の建設が始まっています。
[ロシア海軍北方艦隊で極超音速ミサイル"ツィルコン"の保管倉庫の建設が始まった]

2021年11月下旬以降に「ツィルコン」(水上発射型)の量産が始まりました。
[ロシア海軍の為の極超音速対艦ミサイル"ツィルコン"の量産が始まった]
2022年8月下旬、セルゲイ・ショイグ国防相もそれを認めました。
[ロシア海軍の極超音速対艦ミサイル「ツィルコン」の量産は始まっている]

水上発射型の次は、「ツィルコン」地上発射型の開発が優先されているようです。
地上発射型「ツィルコン」は、超音速地対艦ミサイル「バスチオン」(「オーニクス」の地上発射型)と同じような発射機(2連装発射筒搭載車両)になるようです。

水上発射型「ツィルコン」「オーニクス」と同じ垂直発射機3S-14を使用している事から、地上発射型「ツィルコン」「バスチオン」の地上発射機を流用して比較的簡単に開発する事は可能でしょう。

水中発射型「ツィルコン」の次の発射試験は、「ヤーセン」シリーズの6番艦「ペルミ」(2016年7月29日起工、2025年就役予定)で2024年に行なわれるとの事ですから、2021年10月初頭の「セヴェロドヴィンスク」による水上及び水中からの発射試験の結果を受け、何らかの改正や修正が行なわれるようです。
[原子力潜水艦からの極超音速ミサイル"ツィルコン"発射試験は2024年に再開される]

水中発射型「ツィルコン」ロシア海軍への供給は、2025年以降になるようです。
[極超音速ミサイル"ツィルコン"潜水艦発射型のロシア海軍への供給は2025年に始まる]


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「ツィルコン」は、超音速対艦ミサイル「オーニクス」対地/対艦巡航ミサイル「カリブル」の両方を発射できる汎用垂直発射機3S-14UKSKから発射できます。
(つまり、「カリブル」「オーニクス」と発射機を共有できる)

「ツィルコン」は、ロシア海軍の新世代艦であるプロジェクト22350フリゲート及びプロジェクト22350Mフリゲートプロジェクト885/885M「ヤーセン」原子力水中巡洋艦に装備されます。

この他、現在、大規模な近代化改装が行なわれている重原子力ロケット巡洋艦「アドミラル・ナヒーモフ」にも装備されます。
[近代化改装される重原子力ロケット巡洋艦アドミラル・ナヒーモフはロシア海軍の新世代水上艦と同じ兵装を得る]

同様に大規模な近代化改装が行なわれるプロジェクト949A原子力水中巡洋艦(オスカーII級巡航ミサイル原潜)にも装備されます。
[近代化改装される原子力水中巡洋艦イルクーツクは2023年末にロシア海軍太平洋艦隊へ復帰する]

「ツィルコン」は、実質的には「グラニート」の後継という位置付けになるようです。

この他、現在、設計作業が進められており、2020年代から建造が始まるロシア海軍第5世代原子力潜水艦「ハスキー」/「ライカ」級にも装備されます。
[ロシア第5世代多目的原子力潜水艦プロジェクト「ハスキー/ライカ」]
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