ロシア海軍北方艦隊の重戦略用途原子力水中巡洋艦TK-208(ドミトリー・ドンスコイ)は就役40周年を迎えた

『タス通信』より
2022年12月14日14時0分配信
【原子力潜水艦艦長オレグ・ツィビン:「ドミトリー・ドンスコイ」は祖国への義務を100パーセント果たした】
12月14日、世界最大の原子力潜水艦である重戦略用途原子力水中巡洋艦「ドミトリー・ドンスコイ」は、海軍旗初掲揚日を迎えた。
この日は、艦の戦闘勤務の始まりと考えられている。
同艦は40年前に海軍へ加わった。
2006年~2022年に原子力潜水艦の艦長を務めたオレグ・ツィビン1等海佐は、『タス通信』のインタビューに対し、豊富な勤務と独特な艦について話した。

[重戦略用途原子力水中巡洋艦「ドミトリー・ドンスコイ」]
後の「ドミトリー・ドンスコイ」と命名された重戦略用途原子力水中巡洋艦TK-208は、1976年に『セヴマシュ』で起工された。
1981年12月29日に受領証書へ署名された。
これはプロジェクト941のトップ艦である。
『セヴマシュ』における同プロジェクトのトップ艦の作成は、強力なロケット艦を短期間で建造するという課題を解決する為、国の軍事産業複合体の科学的-技術的ポテンシャルを実現した鮮明な事例である。
原子力潜水艦の作成へ1000以上の組織及び企業が取り組んだ。
プロジェクト941重戦略用途原子力水中巡洋艦は、アメリカ合衆国との均衡を保障する上で重要な役割を果たした。
2005年9月27日、その艦上から初めて新世代海上発射弾道ミサイル「ブラヴァー」が発射された。
「ドミトリー・ドンスコイ」は一種の「海上実験室」となった。
今日において、「ブラヴァー」は海軍の軍備となっている~それは第4世代原子力潜水艦プロジェクト「ボレイ」及び「ボレイ-A」が装備している。
「原子力潜水艦ドミトリー・ドンスコイは、我々にとっては母親のようなものです~幼い子供や兄弟にとっては、彼女はそれらを育てます。
結局の所、潜水艦は単独では試験できません。
それは他の誰かと接触して動作しなければなりません。
以前にはペアで別々の作戦を実施する為、北方艦隊から戦闘艦を呼び寄せておりました。
今日において、この役割はドミトリー・ドンスコイが実行しております」
1989年~2004年に原子力潜水艦の試運転チームの責任者だったエフゲニー・スロボジャンは『タス通信』へ述べた。
艦の長さは172.8メートル、幅は23.3メートル、高さ-26メートル(キールから船室の最上部まで、9階建ての建物の高さに匹敵)。
潜水艦「ドミトリー・ドンスコイ」は、世界最大の原子力潜水艦として『ギネスブック』に掲載された。
それは5つの船体で構成される~2つの主要船体と3つの追加船体。
主要なものにカタマラン配置が有る。
-オレグ・ゲンナジエヴィチ、最近に艦はどのような任務を遂行し、どのくらい充実した勤務でしたか?
「2017年以降、艦は56000海里を走破しました。
主要海軍パレードへ参加した後、私達はバレンツ海及び白海エリアにおける戦闘訓練活動を支援しました。
ロスリャコヴォ村でのドック修理を行ないました」
「艦の乗組員へ割り当てられた主な任務は、『セヴマシュ』で建造された新たなロケット水中巡洋艦の試験の支援でした。
艦の間の連携へ取り組み、第4世代原子力潜水艦の乗組員へ経験を伝えました。
共有するものがあります~ドミトリー・ドンスコイでは、時間通りに適切な品質で任務を遂行する事を目的とする纏まりが有り、よく調整された要員が勤務しておりました」
-過去5年間のどの年が、他の年と違っていましたか?
「おそらく、2021年が我々にとって最も充実した年でした。
艦は海上で131日、つまり1年のほぼ3分の1を過ごしました」
-艦が40年間海軍に在籍していた事を考えると、印象的ですね。
「そうですね、それは信頼できる戦闘組織であることが証明されました。
1982年の誕生以来、今年8月の時点で巡洋艦は110000海里を走破しました。
これは、地球を約4周するか、それより少し多くなります。
この間、艦は緊急事態の為に海から戻ってきた事は有りませんでした。
ドミトリー・ドンスコイは祖国への義務を100パーセント果たしました」
-もちろん、重水中巡洋艦が艦隊での勤務を成功させたのは、そこで勤務している人々の功績ですね。
「ええ、その通りですね。
要員は、材料部分(兵器及び機器)の操作の豊富な経験を持っています。
これはロシア連邦海軍の唯一の乗組員であり、航海本部士官も無く、指揮官が乗船する事も無く、海上で独立して任務を遂行し、ミサイル射撃を行ないます。
原子力潜水艦ドミトリー・ドンスコイで勤務に就く潜水艦船員は、軽微な修理を実施する為の充分な技術的知識を持ち、艦が割り当てられた全ての任務を事故を起こす事無く遂行できるようにします」
— 乗組員の秘密は何ですか?
「団結ですね。
乗組員は長期に渡り形成されました。
乗組員は、同じ戦闘ポスト、指揮所で勤務に就き、堅固な骨格を持っています。
人々は互いをよく知っており、互いに信頼しています。
これは頼れるチームです」
-全ての乗組員は、様々な場所から艦へ乗り込んでいます。
大学卒業後、配属により水上艦から転勤したり、別の潜水艦から転勤したり・・・
貴方が潜水艦乗員になるまでの道程はどのようなものでしたか?
「始めて海と軍艦を見たのは、セヴァストーポリ近郊の矯正労働収容所でした。
軍事船員になる事を決め、カスピ海の学校へ入学しました。
その後、潜水学校へ転校しました。
4年生の時にアクラ(941原潜)でインターンシップを行ない、これこそが私が勤務したい艦である事に気付きました。
学校を卒業した後、第18水中巡洋艦師団(941原潜の部隊)へ入り、航海士となり、自立していきました。
夢は、世界最大の潜水艦の艦長になる事でした」
-我が国の海軍で最も独特な艦の内の1隻で勤務した後の印象は如何ですか?
「感謝ですね。
設計局『ルビーン』には、このように壮大な艦の設計と発明に対して。
『セヴマシュ』には、建造の品質に対して。
艦は信頼できるものである事が証明されました。
そして乗組員へ~原子力潜水艦での勤務を続けている全ての人へ」


ロシア・ソ連潜水艦総合情報サイト『ディープストーム』より
【プロジェクト941「アクラ」(NATOコード名「タイフーン」)】
プロジェクト941重戦略用途原子力水中巡洋艦(タイフーン級)は、1981年~1989年に6隻が就役しましたが、現役に留まっているのは1隻のみであり、既に3隻が解体されています。

プロジェクト941巡洋原子力潜水艦の1番艦TK-208は、セヴェロドヴィンスクのセヴマシュ造船所で1976年6月30日に起工されました。





1980年9月27日に進水し、1981年6月から8月まで工場航行試験を行ない、1981年11月から12月末まで国家試験を行ないました。
1981年12月27日には、初めて弾道ミサイルR-39の発射に成功しました。
1977年7月25日付でプロジェクト941は「重戦略用途ロケット水中巡洋艦」に類別変更されました。
1981年12月29日に受領証書へ署名されてソ連海軍へ納入されましたが、翌1982年10月までは弾道ミサイルR-39(SS-N-20)の発射試験に従事し、総計で18回の発射に成功しました。

R-39の戦力化の目途が立った事を受け、1982年12月14日に海軍旗初掲揚式典を開催し、正式にソ連海軍へ就役し、北方艦隊の第18潜水艦師団へ編入されました。
同年12月21日に母港となるザーパドナヤ・リツァのニェールピチャ基地へ到着しました。

その後は戦闘勤務(戦略核パトロール任務)や弾道ミサイルR-39の発射試験に従事しました。
1988年9月20日にセヴェロドヴィンスクの『セヴマシュ』へ到着し、新型弾道ミサイル「バルク」を搭載するプロジェクト941U改装が行なわれる事になり、翌1989年1月20日には予備役に編入されました。
しかし、1991年12月のソ連邦解体により資金供給は止まり、TK-208の工事はストップしました。
1992年6月3日付で「重戦略用途原子力水中巡洋艦」に類別変更されました。
その後、弾道ミサイル「バルク」の開発は中止され、新たにモスクワ熱技術研究所が開発する「ブラヴァー」を搭載する事になった為、今度はプロジェクト941UM改装を受ける事になりました。

2000年10月7日に「ドミトリー・ドンスコイ」と命名されました。
2002年6月26日に再進水し、6月30日から係留試験を開始し、翌2003年に洋上試験を行ないました。

洋上試験は2004年12月初頭に完了し、ロシア海軍へ再就役しました。

2005年から2010年まで潜水艦弾道ミサイル「ブラヴァー」の発射試験に従事しました。

2010年10月29日の発射試験を最後に「ブラヴァー」発射試験艦としての任務を解かれました。
[「全力全開」ブラヴァー発射試験(2010~2011年)]
その後は洋上試験を行なう新型潜水艦のサポート(試験のモニタリング)を行なう事になりました。
[タイフーン級原潜「ドミトリー・ドンスコイ」は試験艦として現役に留まる]

2013年には新造原子力潜水艦「アレクサンドル・ネフスキー」と「セヴェロドヴィンスク」の洋上試験をサポートしました。
[タイフーン級原潜はロシア新世代原潜の海洋試験をサポートする]
2014年にも、新造原子力潜水艦の洋上試験の支援任務の為に何度か出航しています。
[タイフーン級原潜ドミトリー・ドンスコイは出航した]
[タイフーン級原潜ドミトリー・ドンスコイは帰港した]
[ロシア海軍最新鋭原潜セヴェロドヴィンスクはタイフーン級原潜ドミトリー・ドンスコイと共に出航した]
2015年6月26日から7月16日まで白海へ出航しました。
[ロシア海軍のタイフーン級原潜ドミトリー・ドンスコイは白海へ出航した]
[ロシア海軍最後のタイフーン級原潜ドミトリー・ドンスコイは3週間の航海を終えて帰港した]
2015年9月3日から10日まで、再び白海へ出航しました。
[ロシア海軍最後のタイフーン級原潜ドミトリー・ドンスコイは白海へ出た]
[ロシア海軍の重原子力戦略用途ロケット水中巡洋艦ドミトリー・ドンスコイはセヴェロドヴィンスクへ帰港した]
その後、暫く動向が報じられなかった「ドミトリー·ドンスコイ」ですが、2017年5月27日にセヴェロモルスクへ到着しました。

[ロシア海軍最後のタイフーン級原潜ドミトリー・ドンスコイは北方艦隊基地セヴェロモルスクへ移動した]
2017年7月中旬、「ドミトリー・ドンスコイ」は、クロンシュタットの『ロシア海軍の日』観艦式へ参加する為、重原子力ロケット巡洋艦「ピョートル・ヴェリキー」と共にバルト海へ向かいました。
[ロシア海軍北方艦隊の重原子力ロケット巡洋艦ピョートル・ヴェリキーと重戦略用途原子力水中巡洋艦ドミトリー・ドンスコイはバルト海へ向かった]
「ドミトリー・ドンスコイ」と「ピョートル・ヴェリキー」は、2017年7月25日にクロンシュタットへ到着しました。
[ロシア海軍北方艦隊の重原子力ロケット巡洋艦ピョートル・ヴェリキーと重戦略用途原子力水中巡洋艦ドミトリー・ドンスコイはクロンシュタットへ到着する]
2017年7月30日の『ロシア海軍の日』、サンクトペテルブルクとクロンシュタットで観艦式(主要海軍パレード)が行なわれました。

[2017年7月30日にクロンシュタットとサンクトペテルブルクで挙行される『ロシア海軍の日』観艦式には約40隻の艦船が参加する]
北方艦隊からは、重原子力ロケット巡洋艦「ピョートル・ヴェリキー」、重戦略用途原子力水中巡洋艦「ドミトリー・ドンスコイ」、ロケット巡洋艦「マルシャル・ウスチーノフ」、大型対潜艦「ヴィツェ・アドミラル・クラコーフ」の他に、潜水艦「ウラジカフカス」もクロンシュタットの観艦式へ参加しました。
「ドミトリー・ドンスコイ」と「ピョートル・ヴェリキー」は、主要海軍パレード終了後の翌7月31日にクロンシュタットを出航しました。
[ロシア海軍北方艦隊の重原子力ロケット巡洋艦ピョートル・ヴェリキーと重戦略用途原子力水中巡洋艦ドミトリー・ドンスコイはクロンシュタットを去った]
北方艦隊艦船部隊は、8月7日までに北海へ入りました。
[クロンシュタットの『ロシア海軍の日』観艦式へ参加した北方艦隊の艦船は北海へ入った]
その後、北方艦隊艦船部隊はバレンツ海で演習を行なった後、8月11日にセヴェロモルスクへ帰投しました。
[クロンシュタットの『ロシア海軍の日』観艦式へ参加した北方艦隊の艦船はセヴェロモルスクへ帰投した]
「ドミトリー·ドンスコイ」は、暫くの間セヴェロモルスクに留まっていましたが、9月初頭に出航し、9月4日に母港セヴェロドヴィンスク(白海海軍基地)へ帰港しました。
[重戦略用途原子力水中巡洋艦ドミトリー・ドンスコイはセヴェロドヴィンスクへ帰港した]
2017年9月には北方艦隊の演習へ参加しました。
[タイフーン級戦略原潜ドミトリー・ドンスコイはロシア海軍北方艦隊の演習へ参加する]
2017年12月15日には就役35周年記念式典が開催されました。
『ロシア連邦国防省公式サイト』より
ロシア北方艦隊広報サービス発表
2017年12月15日10時4分配信
【世界最大の潜水艦は35周年を迎えた】
2018年~2019年にはオーバーホールを行ない(2018年初頭から6月までロスリャコヴォの大型浮きドックPD-50へ入渠)、2019年6月20日から白海で航行試験を行ない、深度200メートルまで潜航しました。



セヴェロドヴィンスクへ帰投する「ドミトリー・ドンスコイ」(2019年7月23日)

2021年6月20日、白海でセヴェロドヴィンスク(白海海軍基地)に駐留する小型対潜艦の対潜戦闘訓練の相手役を務めました。
[ロシア海軍北方艦隊の重戦略用途原子力水中巡洋艦TK-208(ドミトリー・ドンスコイ)は白海で対潜戦闘訓練へ参加した]
7月15日にも白海海軍基地の小型対潜艦2隻の対潜戦闘訓練の相手役を務めました。
[ロシア海軍北方艦隊の重戦略用途原子力水中巡洋艦TK-208(ドミトリー・ドンスコイ)は白海で小型対潜艦の訓練の敵役を務めた]
2021年8月23日に起工されたプロジェクト955A(ボレイ-A)戦略用途原子力ロケット水中巡洋艦2隻の内の1隻は、「ドミトリー・ドンスコイ」と命名されました。
[ロシア海軍の為のボレイ-A戦略用途原子力ロケット水中巡洋艦2隻、プロジェクト20380コルベット1隻、、プロジェクト20385コルベット1隻、プロジェクト06363潜水艦2隻はプーチン大統領の号令下で一斉に起工された]
これに伴い、今の「ドミトリー・ドンスコイ」は、「名無し」のTK-208として現役に留まる事になりました。
[ロシア海軍北方艦隊の重戦略用途原子力水中巡洋艦TK-208(ドミトリー・ドンスコイ)は2020年代半ばまで現役に留まる]
(2022年7月下旬に一部メディアで同艦が退役すると報じられたが、8月中旬にロシア海軍総司令官ニコライ・エフメノフ提督が否定した)
TK-208は2022年6月末~7月初頭頃に出航し、約1ヶ月間の海上行動を終えて7月26日に白海海軍基地(セヴェロドヴィンスク)へ帰投しました。
TK-208は、新造潜水艦2隻~「クラスノヤルスク」と「ゲネラリーシムス・スヴォーロフ」の白海での洋上試験の支援任務に就いていたようです。
[ロシア海軍北方艦隊の重戦略用途原子力水中巡洋艦TK-208(ドミトリー・ドンスコイ)は約1ヶ月間の洋上行動を終えてセヴェロドヴィンスクへ帰投した]
8月1日、TK-208は白海海軍基地から出航しました。
目的は「戦闘演習任務」としか言われていませんが、おそらくは新造原子力潜水艦の洋上試験の支援でしょう。
[ロシア海軍北方艦隊の重戦略用途原子力水中巡洋艦TK-208(ドミトリー・ドンスコイ)は白海へ出航した]
9月中旬も「クラスノヤルスク」と「ゲネラリーシムス・スヴォーロフ」はバレンツ海で洋上試験を続けており、TK-208はアメリカの原子力潜水艦がこの2隻に近付かないように監視していたようです。
[ロシア海軍北方艦隊の重戦略用途原子力水中巡洋艦TK-208(ドミトリー・ドンスコイ)はバレンツ海で新造原子力潜水艦クラスノヤルスクとゲネラリーシムス・スヴォーロフの洋上試験の支援任務に就いている]
ロシア連邦軍の新年度は12月1日から始まりますが、その2022年12月上旬、『全ロシア海軍支援運動』会長ウラジーミル・マリツェフ氏は、TK-208は乗組員を削減し、退役を準備していると述べました。
ただ、技術保守要員だけは残すとの事ですから、完全に除籍するわけでは無いようです。
[ロシア海軍北方艦隊の重戦略用途原子力水中巡洋艦TK-208(ドミトリー・ドンスコイ)は退役を準備する]
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