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ロシア海軍の新世代汎用揚陸ヘリコプター母艦イワン・ロゴフ型の為のサイドスラスターの試験がニジニ・タギルで行なわれた

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『KORABEL.RU』より
2023年2月13日10時54分配信
【出力1メガワットのサイドスラスターの工場試験は成功裏に完了した】

試験はニジニ・タギルで2月10日に行なわれた。
サイドスラスターは、プロジェクト23900艦の為に『船舶動力複合体』が製造した。
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試験には発注主のブトマ記念ケルチ工場、運輸支局、海事登録局の代表が参加した。
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2011年6月にロシアフランスへ2隻の「ミストラル」級ヘリコプター揚陸ドック艦(ヘリコプター空母)を発注し、「ウラジオストク」、「セヴァストーポリ」と命名された艦は2014年と2015年に引き渡される筈でしたが、フランスウクライナ情勢に関連して引き渡しを凍結しました。

2015年8月5日、ロシア連邦大統領ウラジーミル・プーチンフランス大統領フランソワ・オランドは電話で会談し、「ミストラル」級ヘリコプター揚陸ドック艦の建造・供給契約の終了(破棄)を決定しました。
[ロシアとフランスはロシア海軍向けミストラル級ヘリコプター揚陸ドック艦の契約を終了させた]

フランスロシアへ補償金として約9億5000万ユーロを支払い、2隻の「ミストラル」級に設置されたロシア製機器は全て取り外してロシアへ返却されました。
[ロシア海軍向けミストラル級ヘリコプター揚陸ドック艦の契約終了によりフランスはロシアへ9億4975万4849ユーロを支払う]
[ロシア海軍向けだった2隻のミストラル級ヘリコプター揚陸ドック艦から取り外されたロシア製機器は全てロシアへ到着した]
[ロシア向けだった2隻のミストラル級ヘリコプター揚陸ドック艦から取り外されたロシア製機器はロシア海軍へ引き渡される]

その後、2隻の「ミストラル」級エジプトへ売却されました。
(1番艦は「ガマール・アブドゥル=ナーセル」、2番艦は「アンワル・アッ=サーダート」と改名)

「ガマール・アブドゥル=ナーセル」(旧「ウラジオストク」):2016年6月2日にエジプト海軍へ引き渡し。
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「アンワル・アッ=サーダート」(旧「セヴァストーポリ」):2016年9月16日にエジプト海軍へ引き渡し。
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一方、ロシアは、以前からロシア版ミストラルとも言える大型の全通甲板ヘリコプター揚陸艦(汎用ヘリコプター揚陸艦)の設計を進めており、2015年6月には、汎用ヘリコプター揚陸艦の概念設計案「ラヴィーナ」の詳細が公表されました。
[ロシア海軍将来汎用揚陸ヘリコプター搭載艦プロジェクト「ラヴィーナ」]

汎用ヘリコプター揚陸艦の為に新たな戦闘情報管理システムも開発されます。
[ロシア海軍将来汎用揚陸艦の為の新たな戦闘情報管理システムが開発される]

搭載機は、元々は「ミストラル」用に開発された艦上攻撃ヘリコプターKa-52K「カトラン」などになります。

[艦上攻撃ヘリコプターKa-52Kカトランはロシア海軍の新世代汎用揚陸ヘリコプター母艦イワン・ロゴフ型の艦載機となる]


この他、ソ連時代に生産された戦闘輸送ヘリコプターKa-29も搭載されるようです。
Ka-29は1990年代以降は予備役として保管されていましたが、2016年から修復が始まりました。

汎用ヘリコプター揚陸艦の機関は、ディーゼル/ガスタービン複合推進CODAG(COmbined Diesel And Gas turbine)になるようです。
これはディーゼルが巡航用、ガスタービンが増速用であり、ロシア海軍の新型艦では、プロジェクト22350フリゲートに採用されています。
[ロシア新世代艦のガスタービンとディーゼル]


新世代汎用揚陸艦を建造する造船所は、ロシア海軍向け「ミストラル」級2隻の船体後部を建造したサンクトペテルブルク『バルト工場』などが候補に挙がっていましたが、ロシア造船所で最大規模の乾ドック(全長360メートル、幅60メートル)を有するクリミア半島ケルチ市造船工場『ザリフ』(造船コーポレーション『アク・バルス』傘下)に決まりました。
【造船工場『ザリフ』公式サイト】
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2隻の汎用揚陸艦の建造費は、ほぼ1000億ルーブルになるようです。
[ロシア海軍の為の新世代汎用揚陸艦(ヘリコプター母艦)2隻の建造費は1000億ルーブルになる]
因みに1000億ルーブルは、プロジェクト22350(「アドミラル・ゴルシコフ」型)フリゲート4隻分に相当します。

2隻の汎用揚陸艦の建造契約は2020年5月下旬に締結されました。
[ロシア海軍の為の新世代汎用揚陸艦(ヘリコプター母艦)2隻の建造契約が締結された]
[クリミア半島のザリフ造船所はロシア海軍のプロジェクト23900汎用揚陸艦の建造準備を進めている]

2020年7月20日、2隻のプロジェクト23900汎用揚陸艦の起工式典が開催されました。
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[ロシア海軍のプロジェクト23900汎用揚陸ヘリコプター母艦イワン・ロゴフとミトロファン・モスカレンコはクリミア半島のザリフ造船所で起工された]
2隻の汎用揚陸艦の艦名は、以前には「セヴァストーポリ」「ウラジオストク」が有力視されていましたが、結局、旧ソ連時代のプロジェクト1174大型揚陸艦の1番艦と3番艦の名前を受け継いだ「イワン・ロゴフ」「ミトロファン・モスカレンコ」となりました。

プロジェクト23900汎用揚陸艦の設計案は、以前からソ連/ロシアの一連の揚陸艦の設計を手掛けていた『ネヴァ川計画設計局』ではなく、造船コーポレーション『アク・バルス』傘下のゼレノドリスク設計局の案が採用されました。
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ゼレノドリスク設計局が設計したプロジェクト23900汎用揚陸艦は、フランス「ミストラル」級をタイプシップとしているようです。
[プロジェクト23900汎用揚陸艦(イワン・ロゴフ型)の開発・建造元『アク・バルス』のトップは語る]
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プロジェクト23900汎用揚陸艦は、指揮艦としての能力も付与されます。
[ロシア海軍の新世代汎用揚陸ヘリコプター母艦イワン・ロゴフ型は指揮艦として使用される]
[ロシア海軍の新世代汎用揚陸ヘリコプター母艦イワン・ロゴフ型の為の指揮システムが開発される]
この場合は、例えば、地中海ロシア海軍常設作戦連合部隊の旗艦としての使用などが考慮されているようです。

以前には、プロジェクト23900汎用揚陸艦は満載排水量25000トン、ヘリコプター20機搭載、海軍歩兵900名を積載すると言われ、その後、設計変更されて満載排水量は30000トンに拡大し、ヘリコプター16機搭載、海軍歩兵1000名積載、そして艦上無人攻撃機も搭載する事になりました。
[ロシア海軍の新世代汎用揚陸ヘリコプター母艦イワン・ロゴフ型は艦上無人攻撃機を搭載する]

しかし2020年12月末、ロシア連邦国防次官(防衛産業担当)アレクセイ・クリヴォルチコ氏は、プロジェクト23900汎用揚陸艦の(満載)排水量は40000トンになると述べました。
[ロシア海軍の新世代汎用揚陸ヘリコプター母艦イワン・ロゴフ型は40000トンになる]

2020年7月の起工から7ヶ月後の2021年2月、「イワン・ロゴフ」「ミトロファン・モスカレンコ」の船体の形成が始まりました。
[ロシア海軍の新世代汎用揚陸ヘリコプター母艦イワン・ロゴフ型の船体の形成が始まった]

1番艦「イワン・ロゴフ」ロシア海軍への引き渡しは2028年に予定されています。
[新世代汎用揚陸ヘリコプター母艦イワン・ロゴフは2028年にロシア海軍へ就役する]
配備先は太平洋艦隊になるようです。
[ロシア海軍太平洋艦隊へ新世代汎用揚陸艦(新イワン・ロゴフ型)が配備される]

一方、2番艦「ミトロファン・モスカレンコ」黒海艦隊へ配備されて同艦隊旗艦となり、セヴァストーポリ港に駐留する事になるようです。
[新世代汎用揚陸ヘリコプター母艦ミトロファン・モスカレンコはロシア海軍黒海艦隊旗艦となる]

プロジェクト23900汎用揚陸艦には無人機無人ヘリコプターが搭載されます。
[ロシア海軍の為の艦上無人攻撃/偵察機と艦上無人ヘリコプターの開発が進められている]
[ロシア海軍の新世代汎用揚陸ヘリコプター母艦イワン・ロゴフ型は無人攻撃/偵察ヘリコプターを搭載する]

更に、プロジェクト12700対機雷防衛艦が搭載している無人小型掃海艇水中無人装置プロジェクト23900汎用揚陸艦へ搭載され、掃海艦としての機能も付与されます。
[ロシア海軍の新世代汎用揚陸ヘリコプター母艦イワン・ロゴフ型は機雷掃海用無人艇を搭載する]

プロジェクト23900汎用揚陸艦の為のベアリングは、セヴェロドヴィンスク『セヴマシュ』造船所で製造されます。
『セヴマシュ』は、ロシアの艦船用ベアリングの製造を独占しています。
[セヴェロドヴィンスクの造船所はロシア海軍の新世代汎用揚陸ヘリコプター母艦イワン・ロゴフ型の為のベアリングを製造する]

2023年1月中旬には、サンクトペテルブルクの企業(本社はチュヴァシ共和国チェボクサリに在る)が製造したプロジェクト23900汎用揚陸艦の為の配電盤『ザリフ』造船所へ引き渡されました。
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[ロシア海軍の新世代汎用揚陸ヘリコプター母艦イワン・ロゴフ型の為の配電盤がケルチ造船所へ引き渡された]

2月10日にはサンクトペテルブルク『船舶動力複合体』が製造したサイドスラスターの試験がニジニ・タギルで行なわれました。
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